TKA術後患者におけるワイドベース歩行の三次元的解析

  • 河原 常郎
    医療法人社団 鎮誠会 千葉大学大学院工学研究科
  • 深江 航也
    医療法人社団 鎮誠会
  • 大森 茂樹
    医療法人社団 鎮誠会 千葉大学大学院医学研究院神経内科学

説明

【目的】我々は第50回日本理学療法学術大会において,健常者を対象に歩隔を大きくした歩行(以下,WB歩行)を運動学的に解析し,外部膝関節内反モーメントの軽減といった変形性膝関節症(以下,膝OA)における疼痛回避の一手段としての可能性を示した。今回は対象を両側TKA術後患者とし,その歩行の特徴とWB歩行による変化を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は両側TKA術後患者女性7名14肢(年齢74.9±7.4歳)とした。使用機器は,VICON MXシステム,床反力計とした。運動課題は歩行動作とし,両踵骨間の距離を①N:規定なし,②W:左右上前腸骨棘間距離,③WH:②の1.5倍の3パターンで実施した。マーカは,15体節の剛体リンクモデルを用い,35点を貼付した。解析項目は,歩隔,歩行速度,足角,歩幅,ケイデンス,下肢関節角度,関節モーメントとした。計測は立脚期を対象とし,歩行速度は自由とした。計測時間は,自然3次スプライン補間を用い,正規化を行った。統計処理は,各歩行パターンの平均値の差を一元配置の分散分析後,有意差を認めたものに対して多重比較Bonferroni法にて検証した。【結果】1)歩隔,歩行速度歩隔は,N:83.9±40.8mm,W:279.9±19.1mm,WH:369.5±24.9mmであり,各歩行パターン間に有意差を認めた。歩行速度は各歩行パターンに有意差を認めなかった。2)足角,歩幅,ケイデンス足角は,N:9.5±3.3°,W:4.8±6.2°,WH:3.6±2.5°でNがW,WHに対して有意に大きい値を示した。歩幅,ケイデンスともに各歩行パターン間に有意差を認めなかった。3)関節角度,モーメント関節角度の変化に関して,股関節は歩隔の増大に伴い,外転角度の増大を示した。膝関節は各歩行パターン共通して,double knee actionの減少,荷重応答に伴う外反の減少を認めた。足関節は各歩行パターン共通して前額面上の角度変化の減少を認めた。関節モーメントの変化に関して,股関節,膝関節ともになだらかな二峰性波形を示したが,WHのみ立脚中期にピーク値をもつ一峰性波形を示した。結果的に立脚初期における膝関節外反モーメントは減少を示した。【結論】TKA術後患者の歩行の特徴として,膝関節における矢状面,前額面上の角度変化やモーメントの変化が小さいことが示された。中でも今回注目した膝関節外反モーメントはWHにおいて減少を示したが,そのグラフの波形は,軽度膝OAの歩行の特徴と類似していた。今回対象としたのは術後1か月のケースがほとんどであり(1例は術後1年),術前の膝OA特有の歩行戦略が残存していたものと考えられた。TKA術後患者におけるWB歩行は,身体機能的に変化をきたしていても,膝OA特有の歩容を誘導してしまうことが示唆された。臨床において我々はその点を考慮し,歩容に対するアプローチも不可欠であると考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2015 (0), 0139-, 2016

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205575801216
  • NII論文ID
    130005417139
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.0139
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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