膝前十字靭帯再建術後再鏡視時における膝伸展筋力に影響する因子
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- 小坂 則之
- 医療法人 高尚会 川田整形外科 リハビリテーション部
書誌事項
- タイトル別名
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- ~体重支持指数(WBI)を用いた筋力指標~
説明
【目的】膝前十字靭帯(ACL)再建術後のスポーツ復帰は半年から1年と期間が長く,スポーツ復帰時にも筋力が完全に回復していないことが多い(堀部2005,柏2012)。またスポーツ傷害予防のためには体重支持指数(WBI:weight-bearing index)1.3が必要(黄川1991)とされているため,術後1年での筋力改善は必要不可欠である。本研究の目的は再鏡視時の患側膝伸展筋力に影響を与える要因を明らかにし,筋力改善のための指標を検討することである。【方法】対象は2012年5月から2013年6月の期間に一般クリニックにて同一術者による解剖学的二重束再建術(STG腱)を施行した患者である。除外基準は高位脛骨骨切り術同時例,両側ACL再建例,再断裂例,経過追跡困難例とし,分析対象は28名28肢(男性10名,女性18名,左16肢,右12肢),年齢28.9±14.2歳(範囲14~63歳),身長163.6±8.4cm(範囲150~180cm),体重62.0±10.9kg(範囲45~90kg)であった。合併症は,外側半月板損傷10例,内側半月板損傷例4例,内側側副靭帯損傷及び内側半月板損傷合併1例であった。対象患者は1年後を目安に再鏡視及び抜釘術を施行した。(442.8±84.4日)術後は,翌日から可動域訓練(CPM:半月板縫合例は翌週より開始),patella setting,SLR,術後1週で1/3部分荷重,伸展制限-10°,術後2週で2/3部分荷重,伸展制限-5°,術後3週で全荷重,膝伸展制限なし,術後4ヶ月でランニング,術後6ヶ月でジャンプトレーニングを開始し,徐々にスポーツ活動に部分復帰し,術後10~12ヶ月で完全復帰を目標としたリハビリテーションを行った。方法は,術前及び2ヶ月,4ヶ月,6ヶ月,再鏡視時に等尺性膝伸展筋力(角度60°でのWBIによる健側・患側及び患健比。百分率にて表示。OG技研社製アイソフォースGT-330使用。)を評価した。またスポーツ活動指標として術前のTegner Activity Level Scale(tegner score)を調査した。再鏡視時の膝伸展筋力に影響をする要因を抽出するため,再鏡視時患側膝伸展筋力を従属変数,年齢,術前・2・6ヶ月患側膝伸展筋力(WBI),術前tegner scoreを独立変数として重回帰分析(AIC基準によるステップワイズ法)を適用した。また多重共線性を確認するためにVIF及び相関行列を確認した。統計解析にはR2.8.1,EZR(freeware)を使用し,有意水準は5%とした。【結果】再鏡視患側膝伸展WBI99.7±24.0%,術前患側伸展WBI64.2±24.9%,2ヶ月患側伸展WBI54.9±24.1%,6ヶ月患側伸展WBI85.2±32.5%,術前tegner score7.3±1.8であった。再鏡視時患側膝伸展筋力に影響する項目は年齢(p=0.057),6ヶ月患側伸展WBI(p<0.01),術前tegner score(p=0.102)であった。(定数:40.6,偏回帰係数:-0.250,0.628,1.679,95%信頼区間:-0.508~0.008,0.522~0.734, -0.365~3.724,標準化偏回帰係数:-0.148,0.850,0.130,調整済みR2:0.89,AIC=114.88,ANOVA:p<0.001)【考察】再鏡視時の患側膝伸展WBIは99.7±24.0%,同患健比89.0±15.0%であり,ジャンプやダッシュ,ターンなどの激しい運動を不安なく行うために必要とされる90%以上(黄川1991)を上回っていたが,スポーツ傷害を予防する指標である130%を達成していたのは2例(7%)と少数であった。統計解析から再鏡視時の患側膝伸展筋力は年齢及び6ヶ月患側膝伸展筋力,術前tegner scoreが影響しており,年齢の減少及びスポーツ活動性増加に伴い伸展筋力は増加する結果となった。しかし,年齢及び術前tegner scoreはp>0.05であり,変数による変動が大きいことを考慮する必要がある。6ヶ月の患側伸展筋力は標準偏回帰係数も0.850と高いため,再鏡視における6ヶ月患側膝伸展筋力の影響はかなり強いことが推定された。術後膝伸展筋力の回復は6ヶ月までに約90%回復(桜井2011)されるとの報告もあり,6ヶ月までに筋力を回復させることが1年後の予後を改善するために重要であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】前十字靭帯再建術後の筋力予後予測は様々な要因が関与しているため,その判断や解釈が困難である。本研究において6ヶ月の患側伸展筋力が大きく影響していることは有用な意味をもっており,この期間までに筋力を回復させておくことが重要であり,術後トレーニングの計画に大いに役立つものであると考える。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2014 (0), 0035-, 2015
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205575919488
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- NII論文ID
- 130005247770
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可