二つのタイプの頭頚部うなずき動作における頚長筋、胸鎖乳突筋活動の超音波による検討

DOI
  • 近藤 正太
    医療法人仁勇会三津整形外科リハビリテーション科
  • 樋上 恭平
    医療法人仁勇会三津整形外科リハビリテーション科
  • 井手 裕一朗
    医療法人仁勇会三津整形外科リハビリテーション科
  • 住井 良利
    医療法人仁勇会三津整形外科リハビリテーション科
  • 沖 勇弥
    医療法人仁勇会三津整形外科リハビリテーション科
  • 井関 亮甫
    医療法人仁勇会三津整形外科整形外科
  • 高橋 傑
    医療法人仁勇会三津整形外科放射線科

書誌事項

タイトル別名
  • ~健常症例と慢性頚部痛症例~

抄録

【はじめに、目的】頚部機能障害に伴う頚部痛に対して行われる頚部安定化エクササイズの初期段階では、頭頚部屈筋群では頭長筋と頚長筋(以下LC)、伸筋群では多裂筋等の分節安定化筋の活性化と、スパズム筋となる胸鎖乳突筋(以下SCM)や斜角筋の活動抑制が求められる。しかし、頚部痛を認める症例では頭頚部うなずき運動時、深部筋活動の減少と表層筋活動の増加が認められたとの報告もあり(Falla;Spine,2004)、適切な方法による筋制御の再教育が求められる。我々も頸部の過可動性に対し頭頸部表層筋の活動を抑制し深部筋を活性化させることを目的に頭頚部うなずき動作による頚部安定化エクササイズを施行している。しかし、このエクササイズが目的とする効果を得ているかどうかは頸部に現れる異常運動パターンの視覚的評価で判断しているのが現状である。近年この頚部筋に対し超音波を用いて断面積を含めた筋肉の大きさを計測しその有用性を示す研究がなされている(Javanshir;J.B&M.T,2011)が、頭頚部うなずき運動の違いによる筋活動の検討についての文献は見当たらない。今回の研究の目的は、2つの異なった頭頚部うなずき動作がLCとSCMの筋厚に与える影響を健常症例と慢性頸部痛症例で比較し検討することである。【方法】頸部痛の既往のない健常症例12名(男性8名、女性4名)、年齢20~39歳(平均25.9±5.64)と断続的に頸部痛を認める症例(以下慢性頸部痛症例)9名(男性3名、女性6名)、年齢22~57歳(平均38.77±12.27)を対象とした。方法1.頭頸部屈曲筋力:すべての症例に対し頸部の前彎を維持した状態で頭部を持ち上げた時の等尺性筋力をHand‐held dynamometerを用いて1回測定した。2.頭頸部うなずき動作:背臥位で頸椎の前彎を維持するため頸部後面にタオルを敷き、下顎に力がはいらないようリラックスさせた肢位からの頭頚部うなずき動作(以下タイプ1Ex.)と、タイプ1Ex.と同様の肢位から後頭部にあてた検者の手掌を軽く押しながら行う頭頚部うなずき動作(以下タイプ2Ex.)の2種類とし実施した。負荷量は各症例の頭部頸部屈曲筋力の10%~20%とし、Hand‐held dynamometerを眉間にあて規定した。3.LCとSCMの超音波測定は東芝フルデジタル超音波診断装置Xaxio.7.5MHz、32mm、Bモードを用い、プローブを第1輪状軟骨の高さに置き短軸撮影した。測定はLC、SCMの安静時と二つのタイプの頭頚部うなずき動作時の活動を記録し静止画にて最大筋厚を計測した。統計学的処理は、Mann-WhitneyのU検定、Wilcoxonの符号付順位和検定、Spearmanの順位相関係数を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】被験者にはヘルシンキ宣言に基づき研究の趣旨を説明し同意を得た。【結果】1.頭頸部屈曲筋力とLC、SCMの安静時筋厚との関係をみると、健常症例でLC(r=0.594)、SCM(r=0.942)となり、いずれの筋も頭頚部屈曲筋力との間で相関性を認めた。慢性頸部痛症例ではLC(r=0.866)、SCM(N,S)とLCのみに相関性を認めた。2.タイプ1Ex.とタイプ2Ex.時の筋厚の変化率を比較するとLCとSCMいずれも健常症例、慢性頸部痛症例においてエクササイズの違いによるに統計学的有意差は認めなかった。しかし、慢性頸部痛症例のLCではタイプ1Ex.(111.7±7.47%)に比べタイプ2Ex.(115.2±9.66%)の方が筋厚の変化率は大きい傾向にあり、健常症例のSCMではタイプ1Ex.(106.2±5.34%)に比べタイプ2Ex.(103.6±6.71%)のほうが筋厚の変化率は小さい傾向にあった。【考察】浅層筋を抑制させ深部筋を優位に活動させるためには低負荷での反復練習による筋再教育が必要であることは文献的にも示されている。タイプ2Ex.は頚部後面筋活動に伴ってSCMの活動を抑制させ、深部筋であるLCを優位に収縮させることが可能であると考えたが、今回の研究結果は2つの異なった頭頚部うなずき運動におけるLCとSCMの活動性に統計学的有意差を認めなかった。しかし、タイプ2Ex では慢性頚部痛症例におけるLCの活動性の増加と、健常症例におけるSCMの減少の傾向を認めており、この手法の有効性を示唆するものと考える。今回の研究で慢性頚部痛症例でのSCMの変化率が両タイプでほとんど変わらなかったことは、超音波検査の段階で特にタイプ2Exの習得が十分でなかったことが一因と考える。今回、負荷量を頭頚部屈曲筋力の10%~20%と規定したが、負荷量が上がるとタイプ1Ex.では頭頚部の持ち上げが強くなり、SCMの活動の高まりによる明確な差が生じる可能性があるため、検討課題としたい。また、今回の結果で慢性頚部痛症例では頭頚部屈曲筋力がSCMよりもLCに依存する傾向にあったことから、LCの筋力低下による頸椎分節不安定性によりSCMを効率的に用いることが出来ないことが考えられ、LCの重要性も示唆された。【理学療法学研究としての意義】頚部機能障害による頚部痛に対する効果的なエクササイズの開発と検証

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012 (0), 48101243-48101243, 2013

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205576397312
  • NII論文ID
    130004585529
  • DOI
    10.14900/cjpt.2012.0.48101243.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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