Modic分類と腰椎疼痛誘発テストを用いた腰部安定性の検討

説明

【はじめに、目的】臨床において腰痛症例は頻繁に観察される。従来から腰痛の原因として、安定性は注目されており鑑別の方法としてX線上での機能写の撮影、疼痛誘発テスト等がある。しかし、発生源の特定は非常に難しく、医師はブロック療法等による補助診断によって,確定診断を行っている。理学療法士として疼痛の発生源を特定することはプログラムを決める上で重要なことだが医師のようにブロックを行うことが出来ないためその代替の手段を模索していく必要がある。その中で、Modic分類を用いた椎体終板変性の画像所見と不安定性と腰痛の関連性は多くの報告がなされており、MRI画像との相関性が報告されている。豊根らによると椎体終板軟骨はMRI のT1強調画像で高輝度を呈するModic Type 2,低輝度を呈するModic Type 1に分類され,Modic Type 1 は椎体間不安定性と腰痛と相関することが報告されている.また、大鳥らによるとType2は椎体間の不安定性が安定化していても軟骨終板の輝度変化異常例では、軟骨終板の変性の程度が強く、それが腰痛の原因となっていると考えられたと述べている。今回、Type2が過少運動性であるという大鳥らの報告を確認するためModic分類と腰椎分節に対する疼痛誘発テストを用いて検討したので報告する。【方法】対象は罹病期間が3カ月以上を有する慢性腰痛症例で、体幹自動運動テストにて腰痛を主訴とする62例(内訳(内訳:【男性41例/平均55.2歳、女性21例/63.0歳】)である。その中から、MRI画像を確認し、椎体終板輝度の変化を確認した。除外項目として明らかな神経学的脱落所見を呈する症例、脊椎すべり症、脊椎の炎症、重度の側彎、脊椎の手術を経験している症例を除外した。評価項目として、椎体軟骨終板の変性をModic分類(Type1 MRIでT1低信号・T2高信号、Type2はMRIで終板沿いのT1高信号・T2高信号、Type3はMRIでT1著明低信号、T2著明低信号)の3分類、椎間板変性は腰椎MRIT2強調画像正中矢状断を撮影し、変性の程度を信号強度に基づき5段階に分類(Pfirrmann分類)、そして腰椎分節レベルでの疼痛誘発テスト(スプリングテスト)を評価した。MRI画像は、1.5TのMRIを使用し、撮影姿勢は背臥位、腰椎MRI画像矢状断面の椎間板中央のレベルで、T1画像とT2画像の信号強度で分類した。スプリングテストは腰椎分節ごとにストレスをかけ、疼痛が出現した場合を陽性、疼痛が出現しなかった場合を陰性とした。【倫理的配慮、説明と同意】症例には、当院の倫理規則に従いこの研究の趣旨を十分に説明し同意を得た。【結果】対象症例62名のうち椎体終板の輝度変化が認められたのは27例となり、Modic分類で、Type1が5例、Type2が12例、Type3が10例となった。Modic分類でType1が認められた分節レベルでの疼痛誘発テストが陽性となったのは5例中3例、Type2が認められた分節レベルでの疼痛誘発テストでは12例全例が疼痛を訴えない結果となった。この結果は、大鳥らの報告を肯定する結果であり、Type2は過剰運動性を伴わないと考えられる結果となった。椎間板変性の程度はPfirrmann分類において、椎体終板輝度正常群では平均3.0、椎体終板輝度異常群では平均4.3と有意に差が見られる結果となり諸々の研究結果を肯定する結果となった。【考察】Modic分類においてModic Type1は不安定性と腰痛との相関性が高いという報告は数多くなされている。今回、Modic Type1は5例中3例で疼痛が出現し陽性となり、半数以上に不安定性が認められた。Modic Type2では12例全例で疼痛誘発テストが陰性となっており不安定性は認められなかった。この結果からMRI画像上のModic Type2と腰椎分節への疼痛誘発テストの陰性は相関していると考えらえた。不安定性を持つ症例では疼痛誘発テストでの症状の再現などで確認を行うことが出来るが、過少運動性に対しては他動運動テストなどでしか確認する事が出来ず、症状の再現を確認する事も難しい。しかし、椎体終板変性により終板変性部位にはTNFが正常群に比べ約7倍の発現を認め、また約5倍の神経線維の増生も報告されている。これらの事から、椎体終板の変性が起こることよって、不安定性だけでなく過少運動性においても疼痛を誘発する原因となることが考えられるため、過少運動性の鑑別も考えていく必要がある。今回の研究で、Modic Type2では疼痛誘発テストでは痛みが出現せず過少運動性が考えられることが示された、今後は過少運動性を呈する分節に対する治療を行い治療効果の判定を行っていく事が必要と考える。【理学療法学研究としての意義】今回の結果から、画像診断の所見と安定性の相関性が確認された。このことから、理学療法を展開していくうえで画像所見から予測し、症状と臨床所見を照らし合わせ治療方法(モビライゼーション等)の展開を行っていく事が望ましいと考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012 (0), 48101346-48101346, 2013

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205576759168
  • NII論文ID
    130004585610
  • DOI
    10.14900/cjpt.2012.0.48101346.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ