頭頸部屈曲運動機器における負荷強度が頸部筋活動に及ぼす影響

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抄録

【目的】頸部障害の要因として,頭頸部屈曲運動の主動筋である頸部深層屈筋の機能不全が報告されている。Jullらは空気圧フィードバック装置を用いた評価とトレーニングを行っており,頸部障害者では頭頸部屈曲運動中の持久性低下が認められている。この方法は段階的に微量の空気圧変化をさせるため課題が難しく,監視下で行う必要がある。そのため,より簡便に自己管理下で使用可能な頭頸部屈曲運動機器を開発した。本研究は,作製した運動機器の負荷強度が頭頸部屈曲の抵抗運動として適正であるかを検証することを目的とした。【方法】対象は頸部に愁訴を持たない健常男性15名(平均年齢21.9±1.3歳)とした。まずJullらの頭頸部屈曲テスト(CCFT)を行い,胸鎖乳突筋(SCM)活動を記録した。方法は,背臥位で圧フィードバック装置(Stabilizer,Chattanooga社製)を頸部後面に挿入して空気圧を20mmHgとし,2mmHgずつ5段階圧上昇させて10秒間維持させ,各段階におけるSCMの筋電図活動を表面筋電計(トリーニョワイヤレスシステム,Delsys社製)により記録した。次に,作製した運動機器を用いた抵抗負荷を行った。抵抗負荷は自覚的運動強度とし,最初に最大努力に機器の顎台を押し付けさせ,次に最大努力の2/3と1/3の強度で行い,それぞれ課題実施中のSCMの筋電図を5秒間記録した。また,頸部屈曲の最大等尺性運動を行い,筋電図を記録した。筋電図データは全波整流の後に平均絶対値を算出し,最大等尺性運動時の平均値により各測定値を補正した(%EMGmax)。SCMが過活動せずに頭頸部屈曲運動を行っている場合に頸部深層屈筋が適正に活動していると推測されるため,以下の分析を行った。CCFTの5段階内におけるSCM筋電図活動の相違,抵抗負荷の3段階内における筋電図活動の相違について反復測定分散分析を行い,主効果が認められた場合は多重比較検定を行った。抵抗負荷中の筋活動とCCFTの筋活動を比較するため,対応のあるT検定を行った。【結果】CCFTの各段階におけるSCM活動では主効果は認められず,段階による筋活動の違いは認められなかった。運動機器の各負荷段階におけるSCM活動は主効果を認め,すべての段階間で有意差を認めた。運動機器の負荷段階とCCFT時のSCM活動は,最大努力負荷ではCCFTの全段階,2/3負荷では22-26mmHg,1/3負荷では22mmHg,24mmHgとの間にそれぞれ有意差を認めた。【結論】CCFTにおけるSCMの筋活動と比較して,運動機器による抵抗負荷時のSCMは,2/3負荷においては30mmHg,1/3負荷においては28mmHg,30mmHgにおける筋活動と同等なレベルであった。このため,抵抗負荷の強度は最大努力ではなく,2/3負荷より低い自覚的運動強度で行うことが推奨される。加えて,抵抗負荷中の各強度段階には筋活動に有意差があり,より選択的に頸部深層屈筋のトレーニングを行うのであれば,有意にSCM活動を抑制できる1/3負荷で行うことが推奨される。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205576854656
  • NII論文ID
    130005417155
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.0184
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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