特発性間質性肺炎により長期人工呼吸器管理となった患者に対して,鎮静剤の変更後に離床が進み,基本動作能力が改善した一症例

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抄録

【目的】人工呼吸器管理中の対象者に対して鎮静剤の変更後に離床が進んだ症例を経験したため報告する。【症例提示】対象者は,80歳代の女性で入院前の日常生活動作は自立しており,認知症はなかった。他院にて胸部X線に広範な浸潤影を認めたため当院を受診した。入院3日目に呼吸状態が悪化して人工呼吸器管理となった。初回の人工呼吸器設定は,SIMVで呼吸数は12回/min,PC20cmH2O,PS20 cmH2O,PEEP3cmH2O,FIO2は0.50であった。鎮静はドルミカムを常時5ml/hから開始して,P/F比は170であった。人工呼吸器の装着(以下,装着)翌日より理学療法を開始した。【経過と考察】装着39日目の人工呼吸器設定は,CPAPとなりPS10cmH2O,PEEP4cmH2O,FIO2は0.40であった。鎮静はドルミカムを夜間のみ使用しており,P/F比は240で,意思疎通は困難な状態であった。リハビリ中は興奮状態となり呼吸数が40回前後まで上昇し,起立練習は困難であった。基本動作は,多介助であった。装着43日目に鎮静剤をプレセデックスへと変更した。その当日より不穏が徐々に軽減し,筆談にて意志疎通が可能となった。リハビリ中の呼吸数も20回前後と低下し,基本動作は軽介助となり起立練習を開始した。鎮静剤の変更前後で胸部X線上の浸潤影には著明な変化はなかった。装着45日目に歩行練習を開始した。装着48日目に人工呼吸器から離脱した。離脱28日目に日常生活動作は見守りで可能となった。対象者は鎮静剤の変更により不穏やせん妄が軽減して呼吸数の低下やコミュニケーション能力の改善,起立練習の開始へと繋がった。リハビリ中の離床が進みだしたことで,基本動作能力が改善したと考える。本症例から鎮静剤の選択はせん妄の改善のみではなく基本動作能力の改善にも寄与する事が示唆された。今後は理学療法士が,鎮静剤について医師や呼吸サポートチームとさらに連携を深めていくことが重要と考える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205576977920
  • NII論文ID
    130005249007
  • DOI
    10.14900/cjpt.2014.1249
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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