造血幹細胞移植患者における下肢筋力に影響する因子の検討

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抄録

<p>【はじめに,目的】造血幹細胞移植治療では移植に伴う合併症や血球減少期における活動制限が廃用症候群を引き起こすとされており,当院でも積極的な運動療法介入を移植前後で施行している。今回我々は退院前である移植後60日目の下肢筋力に着目し,移植前後に影響する因子を比較した。</p><p></p><p></p><p>【方法】2012年9月から2016年6月までに当院で初回の同種造血幹細胞移植を施行した患者のうち移植前後に評価可能であった100例を対象とした。対象者の内訳は,男性60例/女性40例,年齢中央値42歳(16~64歳),疾患は急性白血病(骨髄性43例/リンパ性23例),骨髄異形成症候群23例,非ホジキンリンパ腫11例で移植ソースは血縁26例/非血縁74例,骨髄58例/末梢血27例(HLA半合致8例含む)/臍帯血15例であった。評価項目は移植前と移植後60日に膝関節伸展筋力を徒手筋力測定器ミュータスF-1(アニマ社製)を用いて加藤らの方法にて測定した。筋力値は左右各2回測定し平均値を体重で除した値(kgf/kg)とした。比較因子項目は年齢,性別,診断から移植までの日数,前処置,ドナーソース(血縁・非血縁),疾患リスク,HLA,,Hematopoietic cell transplantation-specific comorbidity index(HCT-CI),移植前後左室駆出率(%)・肺活量(%)・1秒率(%),生着までの日数,,三木らのC反応性タンパク質(CRP)と血清アルブミン値(Alb)を用いたmodified Glasgow Prognostic Score(mGPS)を基準に移植後の血液データ経過からCRP0.5mg/dl以上の継続した日数,Alb3.5mg/dl未満の継続した日数,移植後60日までの理学療法施行日に対して20分以上可能であった理学療法実施率(%)とした。統計解析は移植後60日評価時の筋力値が移植前と比較し維持・増加した群(維持・増加群60名)と低下した群(低下群40名)に分類し,各評価項目をχ2乗検定,対応のないt検定,Mann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%未満とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】理学療法実施率:維持・増加群87.7±12.9/低下群74.9±19.3(%)(p<0.01)とCRP0.5mg/dl以上の継続した日:維持・増加群22.7±15.6/低下群30.5±13.9(日)(p<0.05)は有意差を認めた。年齢,性別,診断から移植までの日数,前処置,ドナーソース,疾患リスク,HLA,,HCT-CI,移植前後左室駆出率・肺活量・1秒率,生着までの日数,Alb3.5mg/dl未満の継続した日数では有意差を認めなかった。</p><p></p><p></p><p>【結論】造血幹細胞移植患者における膝関節伸展筋力の維持・増加にはCRP値の上昇日数が少なく,理学療法実施率の高いことが影響する結果となった。今後はCRP値の経過を観察し,異化作用亢進時期を脱した後,今までより負荷をかけた運動療法の調整と退院後長期的に運動療法の継続メニューを構築していく必要があると考えられた。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205577310336
  • NII論文ID
    130005609566
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.1454
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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