歩行前の前脛骨筋電気刺激が歩行時の足底圧に与える抑制効果

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抄録

【はじめに,目的】歩行時の前足部圧の増加は立脚終期に起こる。前足部圧の増加は足底胼胝の形成を引き起こし,糖尿病患者では胼胝下潰瘍へと進行し足壊疽,切断へと至る例も少なくない。足関節背屈可動域の改善は前足部圧を減少させるとの報告があるが,可動域改善には長期間の介入が必要となる。そのため,潰瘍予防には短時間で効果的に前足部圧を減少させる介入が必要であると考えられる。一方,電気刺激(ES)は相反抑制により拮抗筋の筋活動を抑制すると報告されており,下腿三頭筋の過活動を抑制することで歩行中の前足部圧の増加を抑制できると考えられる。そこで,本研究では前脛骨筋へのESが歩行時の足底圧に与える影響を健常者で検証した。【方法】健常男性10名を対象とした。自然歩行での10m歩行時の足底圧を測定した後,端座位姿勢で電気刺激装置(ES-360,伊藤超短波社製)を用いてESを前脛骨筋に加えた。ESは2500Hzを50Hzに変調した変調波を使用し,足関節の最大背屈が生じる強度で30分間,間欠的(on:10秒,off:10秒)に実施した。足底圧はF-scan(ニッタ社製)を用いて,後足部,中足部,前足部,全足底面における最大足底圧及び圧時間積分値を算出した。同時に,歩行速度,歩数,歩行率,ストライド長,立脚遊脚比を算出した。また,ES前後で足関節背屈可動域を測定した。各対象者における結果は,1歩行周期毎に算出し,10m歩行内の全歩行周期及び4回の10m歩行のデータの平均値を求めた。統計処理はデータの等分散及び正規性を確認して対応のあるt検定を用い,有意水準を5%とした。【結果】ESにより歩行中の前足部の最大足底圧は355.4±35.4 kPaから330.7±33.9 kPaに減少し,圧時間積分値も33.0±1.5 kPa・sから30.8±1.4 kPa・sへと有意に減少した。後足部及び全足底面に関しても同様に最大足底圧と圧時間積分値が有意に減少した。歩行速度,歩数,歩行率,ストライド長,立脚遊脚比,足関節背屈角度はES前後で有意な変化は認められなかった。【結論】前脛骨筋に対するESが歩行中の前足部,後足部及び全足底の最大足底圧および圧時間積分値を減少させ,これらの効果が,歩行速度やストライド長の変化を介さずに得られることが明らかとなった。本研究の結果から前脛骨筋に対するESは,即時的に足底圧を減少させる一手段として有効であると考えられる。

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  • CRID
    1390001205577321728
  • NII論文ID
    130005417723
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.0696
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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