膝関節の屈曲拘縮の程度は立位姿勢における膝圧迫力に影響を与えるか?

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タイトル別名
  • 力学を用いたシミュレーション研究

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>膝関節軟骨への過剰な力学的ストレスは膝の痛みを助長することが報告されている。変形性膝関節症(KOA)患者は階段昇降や立ち上がり動作で膝の痛みを訴えることが多いが,長時間の立位姿勢においても痛みを訴える症例を経験する。立位姿勢における膝関節の力学的ストレス(膝圧迫力)は立位姿勢のアライメントによって変化すると予測され,KOAでは膝関節の伸展可動域が低下することが先行研究により報告されている。しかしながら,膝関節の伸展可動域の低下と,立位姿勢における膝圧迫力の関係は明らかになっていない。本研究は,膝関節の伸展可動域の低下(屈曲拘縮)をシミュレーションで再現し,膝関節の屈曲拘縮の程度が立位姿勢における膝圧迫力に影響を与えるか否かを明らかにすることを目的としている。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>体幹・両大腿部・両下腿部・両足部の7つのセグメントで構成される2次元矢状面のセグメントモデルを作成した(身長:1.7m,体重:65kg)。腸腰筋,広筋群,大腿直筋,大殿筋,大腿二頭筋短頭,半腱様筋,半膜様筋,大腿二頭筋長頭,前脛骨筋,ヒラメ筋,腓腹筋の11筋をセグメントモデルに組み込んだ。股関節伸展20度から屈曲40度,膝関節屈曲40度から伸展0度,足関節底屈40度から背屈30度までの範囲内で,身体質量中心が足長の中間点となる立位姿勢を生成した(743通り)。膝関節のスティフネスを操作し,膝関節を屈曲30度から伸展させたとき,受動的関節モーメントを生じさせた。先行研究に準じて各筋の興奮度を推定し,各筋の興奮度の和が最小となったときの立位姿勢を“最適な立位姿勢”として取得した。膝関節のスティフネスを0(解析開始時)から1Nm/度刻みで増加させ,3回連続で同一の立位姿勢が取得されたとき解析を終了とした。関節力と筋張力から関節間力を求め,その後膝圧迫力を算出した。Scilab-5.5.2を用いてすべての解析処理をした。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>解析開始時の立位姿勢(膝関節の屈曲拘縮なし)における膝圧迫力は6.9N/kgであり,股関節伸展5度,膝関節屈曲10度,足関節背屈11度であった。また,解析終了時の立位姿勢(膝関節の屈曲拘縮あり)における膝圧迫力は13.4N/kgであり,股関節屈曲7度,膝関節屈曲30度,足関節背屈20度であった。膝関節の屈曲拘縮の程度が強くなることで,立位姿勢における膝圧迫力も同様に増加するふるまいがみられた。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>膝関節の屈曲拘縮の程度が強くなることで,立位姿勢における膝圧迫力は増加した。本研究で示した膝圧迫力は,階段昇降や立ち上がり動作における膝圧迫力よりも小さいが,“長時間の立位姿勢”という視点からみれば膝圧迫力をより軽減する必要があると考えられ,膝関節の伸展可動域の拡大や屈曲拘縮の予防が立位姿勢における膝圧迫力の軽減につながる理学療法といえる可能性がある。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205577394048
  • NII論文ID
    130005608651
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0602
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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