胃癌にて開腹胃全摘出術を施行された慢性閉塞性肺疾患を有する超高齢者の周術期リハビリテーション

DOI
  • 三瓶 一雄
    (一財)総合南東北病院リハビリテーション科

書誌事項

タイトル別名
  • ~術後肺合併症を呈すること無くセルフケア自立に至った症例~

抄録

【始めに,目的】医学の進歩と高齢化の進行に伴い超高齢者に対して開腹手術を行う事例が増加している。高齢者は各種臓器の機能低下や併存疾患をもち,術後肺合併症のリスクが高いと言われ,周術期リハビリテーション(以下,周術期リハ)では肺合併症予防に細心の注意が必要である。しかし,超高齢者の周術期リハに関する報告は少ない。今回,慢性閉塞性肺疾患(以下,COPD)を有する超高齢者の開腹術周術期リハに関わり,症例が術後肺合併症を呈すること無くセルフケア自立に至ったので報告する。【症例呈示】90代前半男性。BMI:23.5。既往:COPD中等症。診断名:胃噴門部癌(StageIIIa)。現病歴:食思低下と上腹部痛にて近医受診。胃癌疑いにて,X日当院外科受診。上記診断を受け,手術適応となった。主治医より,呼吸指導徹底の指示あり。術式:胃全摘出術,胆嚢摘出術(X+15日施行)。手術時間4時間47分,出血量200ml。呼吸機能評価:%VC:178%,FEV1.0%:30.7%(X日測定)術前理学療法評価:6MD:383m,握力(Rt/Lt;kgw):20.0/19.0。10m歩行テスト(秒):8.54。呼吸様式:胸式呼吸優位。胸郭可動域良好。呼吸機能評価:%VC:292%,FEV1.0%:55.9%(X+9日測定)。術後肺合併症リスクスコア:8点/21点(ハイリスク)。HOPE:手術して身体を良くしたい。早く自分で起きれるようにしたい(アドヒアランス良好)。入院前生活:農作業実施。日課で散歩実施。【経過】術前理学療法介入(X+1日から開始):術前オリエンテーション及び口すぼめ呼吸・排痰方法の指導。歩行・階段昇降練習及び自主練習の指導による呼吸予備能の改善。術後経過:術後1日目,離床開始。O2:4L(マスク)でSpO2:98%。寝返りは独力で可能。術後2日目,痰がらみ著明。軽介助で端坐位,立位実施可能。適宜ACBTも実施し喀痰。看護師(以下,Ns)と情報共有し,必要時にサクション施行。術後3日目,車椅子離床,歩行練習開始。術後4~6日目,起居動作自立レベル。動作指導にて日中の自主的な離床促進。歩行距離拡大。酸素投与offにてSpO2:97%。術後7日目,トイレ排泄動作自立レベルとなり,尿カテーテル抜去・トイレ排泄開始となりセルフケア自立。【考察】術後肺合併症の予防のためには,術前から呼吸予備能改善を図ることが重要であると言われている。術後肺合併症を呈すること無かった促進因子:①理解力・自己管理能力が高く主体的に排痰・離床可能であったこと(アドヒアランス良好)②症例の歩行能力が年代別平均値よりも高く,運動耐容能が高かったこと。肺活量が良好③術前理学療法等でFEV1.0%改善が図れた④他職種との連携を密にとり,呼吸状態始め全身状態の管理に努めた。【意義】今後,我々は超高齢者の周術期リハに関わることが増加すると予想される。超高齢者の術後肺合併症を予防できるよう周術期リハの関わりに関する症例データの蓄積が重要である。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205577498752
  • NII論文ID
    130005417730
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.0800
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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