COPD患者における6分間歩行試験指標と増悪の関係性についての検討

DOI

抄録

【はじめに,目的】COPD患者において運動耐容能の評価は重要である。運動耐容能の評価方法として,6分間歩行試験(6 minutes walking test;6MWT)が世界的に用いられている。6MWTで得られる結果の一つである6分間歩行距離(6MWD)が,COPD患者の予後と関連することが報告されている。近年,6MWDに歩行中のSpO2を複合して評価する新しい運動耐容能指標としてDesaturation distance ratio(DDR)およびDistance-saturation product(DSP)が報告され,COPD患者にも有用性が示されつつある。DDRは歩行中のΔSpO2(100-歩行中SpO2)の総和を6MWDで除して算出,DSPは6MWDと歩行中終了時SpO2の積を100で除して算出される指標である。本研究では,COPD患者におけるDDRおよびDSPとCOPD増悪の関連を検討した。【方法】外来通院している安定期COPD患者59名を対象とし,後方視的に検討した。本研究の適合基準として,外来受診時に6MWT,肺機能検査,CT検査を受けた患者を設定した。除外基準は,①外来受診前3ヶ月以内に増悪入院歴がある,②在宅酸素療法を使用している,③COPD assessment test(CAT)を測定できていない場合とした。測定項目は,対象者特性,外来受診前3ヶ月から1年以内の増悪歴の有無,CAT,肺機能,6MWT結果から得られる安静時SpO2,SpO2最低値,6MWD,DDR,DSP,CT所見から気腫化の程度(LAA%)を後方視的に情報収集した。統計解析は,①増悪歴の有無で2群に分類し,変数特性に応じχ2検定およびt検定の実施,②増悪予測に対するROC曲線の算出を実施した。統計解析ソフトには,EZR(for Mac)を使用し,有意水準5%未満とした。結果は,(増悪あり群vs増悪なし群;p値)で示した。【結果】本研究の包含基準を満たした対象者は,40名(男性:30名,女性:10名,年齢:72.0±9.1歳)で,増悪あり群(5名:12.5%),増悪なし群(35名:87.5%)であった。2群間では,%努力肺活量(%FVC:60.5% vs 84.7%;p<0.01),%1秒量(%FEV1:38.5% vs 66.0%;p=0.01),%最大呼気流量(%PEF:32.1% vs 56.0%;p<0.01),DDR(4.7 vs 3.0;p<0.01),DSP(227.1 vs 391.7;p=0.01)で有意差を認めた。増悪予測に対するROC曲線のAUC(DDR vs DSP vs SpO2最低値vs 6WMD vs CAT:0.87 vs 0.78 vs 0.75 vs 0.75 vs 0.63)であった。【結論】本研究の結果より,6MWT中により得られるDDRがCOPD増悪歴と関連することが明らかになった。また,他の6MWT関連指標と比較して,ROC曲線による増悪歴予測因子として,DDRが最も予測精度が高い結果となった。このことから,理学療法場面で6MWTを実施し,経時的なSpO2を評価していくことで,より詳細に増悪リスクを予測できる可能性が示唆された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205577537792
  • NII論文ID
    130005417861
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.0822
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ