慢性閉塞性肺疾患を合併した早期非小細胞肺癌患者における胸腔鏡下肺葉切除後の運動耐容能と長期予後との関連

DOI
  • 濱田 和美
    国家公務員共済組合連合会 新小倉病院 リハビリテーション部
  • 入江 将考
    国家公務員共済組合連合会 新小倉病院 リハビリテーション部
  • 兵頭 正浩
    国家公務員共済組合連合会 新小倉病院 リハビリテーション部
  • 安田 学
    国家公務員共済組合連合会 新小倉病院 呼吸器外科
  • 花桐 武志
    国家公務員共済組合連合会 新小倉病院 呼吸器外科

抄録

【はじめに,目的】慢性閉塞性肺疾患(COPD)は肺癌に併存しやすく,術後合併症の増加や長期予後の低下などアウトカムに影響を及ぼすとの報告がある。一方,COPDを対象とした研究では,運動耐容能が長期予後に影響すると報告されている。一般に,肺癌術後の呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)は,術後合併症予防や運動耐容能およびQOL改善を目的に実施するが,その長期予後への影響は不明である。本研究の目的は,胸腔鏡下肺葉切除術を受けたCOPD合併肺癌患者の術後早期の運動耐容能と長期予後との関連を明らかにすることである。【方法】対象は,2009年5月から2012年10月までに,当院で胸腔鏡下肺葉切除術および呼吸リハを施行されたpathological stageIAおよびIBの非小細胞肺癌患者のうちCOPDを合併している患者とした。COPDの診断基準は,the Global Initiative for Obstructive Lung Disease(GOLD)のスパイロメトリーの基準に基づき,1秒量/努力性肺活量<0.7とした。後方視的にカルテより,患者背景と入院中のデータ,フォローアップ期間,死亡日,死因を調査した。運動耐容能評価として,6分間歩行距離(6MWD)を術後7日目に測定した。統計分析は,5年生存率をKaplan-Meier法を用いて分析し,群間の比較はLog-rank検定で検討した。これに加え,5年生存率の独立因子を同定するため,Cox比例ハザード回帰分析を用いた。有意水準は5%とした。【結果】研究期間中の対象連続症例266例のうち,pathological stageIのCOPD合併例61例が分析対象となった。全症例のベースライン時の年齢中央値は73歳(43~85歳),平均フォローアップ期間は3.9±1.5年,研究期間中の全死亡率は25%(15例)であった。Log-rank検定を用いた単変量解析の結果,術後7日目の6MWDのみが5年生存率に関連していた。(≥350m vs. <350m;P=0.030)。年齢,性別,BMI,COPD重症度で調整したCox比例ハザード回帰分析の結果,術後7日目の6MWDは5年生存率に対する有意な独立因子であった(hazard ratio,0.32;P=0.040)。【結論】今回の研究より,COPD合併肺癌患者において,術後早期の運動耐容能低下が5年生存率に影響していた。COPD患者にとって運動耐容能は重要なアウトカムであるとされてきたが,術後にさらなる肺機能低下を来す肺葉切除術を受けたCOPD患者にとって,術後早期の運動耐容能が長期予後に関連する重要な因子であることが示唆された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205577579392
  • NII論文ID
    130005417779
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.0765
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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