デュシェンヌ型筋ジストロフィー(中高年期manifesting carrier)の呼吸機能や歩行等による縦断的研究(第2報)

DOI
  • 指方 梢
    医療法人財団順和会山王病院リハビリテーションセンター
  • 大橋 利也
    医療法人財団順和会山王病院リハビリテーションセンター
  • 鷲崎 一成
    医療法人財団順和会山王病院神経内科

抄録

【目的】症例は64歳に発症したデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)のmanifesting carrierである。発症から約7年,現在は電動車椅子が主体だが,室内は両手に杖を使い歩行している。男児DMDの母ら等のmanifesting carrierは文献等散見するが中高年期発症は稀で,以前もこの症例を追従し第1報とした。2年経過し,新たに知見を得たので報告する。【方法】症例を2010年3月から2015年9月まで1ヶ月毎に,呼吸機能と10m歩行,握力,Functional Independence Measure(FIM),及びBarthel Index(BI)を測定した。呼吸機能は,ミナト医科学社製AS-407にて肺活量(VC)と努力性肺活量(FVC)を各々1~2回計測し,%肺活量(%VC),1秒量,%1秒量,1秒率と最大呼気流量(PEFR)の最大値を用いた。10m歩行は4回計測を基本としたが,体調不良の際2回以上計測できた月まで含めた。握力は左右各々2回計測し最大値を用いた。計67ヶ月中何れか未計測の月を除外し,51月分を用いた。理学療法開始からの日数,10m歩行の時間と速度の最速値,最遅値,平均値,最速と最遅の差(時間差・速度差),握力,呼吸機能,FIMとBIでピアソンの相関係数を求め,相関が有意なもので重回帰式をみた。また,冬(~春)を12~5月,夏(~秋)を6~11月として季節差を対応のあるt検定で試みた。統計はjstat130を用い,有意水準は5%未満とした。【結果】日数は,VC,%VC,%1秒量と1秒率を除くすべてに相関した。それを日数y1として重回帰式を求めると,最遅値>時間差>1秒量>FIM>BIの順で採択された(R2=0.83,p<0.01)。また速度差がVC,%VC,1秒量と%1秒量で相関し,速度差y2とした重回帰式はVCと1秒量が採択された(R2=0.16,p<0.05)。各値の冬と夏では,左右握力に差が見られた。【結論】第1報に増して67ヶ月の経過は更に多くの値と日数が相関した。重回帰式で順位の高い程,日数で段階的に低下すると予想された。その中,VCと%VCは再び日数に相関しなかった。症例は男児DMDと同じく拘束性障害があり,骨格筋の萎縮で肺コンプライアンスは低下し,初回から%VCは80%を割っていた。しかしVCは初回で1.57L,最低値で1.32L,最終1.58Lと変動はあるも少なかった。症例は初期から胸郭の不活動や平定化を予防すべく呼吸リハビリテーションを行い,今回の結果は早い介入が有意義に導かれたと考える。しかし,速度差の出る様な持久性が落ちた時は呼吸機能も低下傾向である。更に臨床経験的に,冬に転倒とメニエール症状を起こしやすく,今回,左右握力が冬に低下し反映されたと考える。当然だが持久性や筋力の低下が今後の機能低下の引き金となると思われ,改めて注意すべきと示唆された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205577607424
  • NII論文ID
    130005417804
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.0777
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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