上下肢への全身振動刺激による胸郭拡張差及び肺機能の即時変化の比較

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抄録

【はじめに,目的】全身振動刺激(以下WBV)は,振動板上で身体機能を向上させるトレーニング方法である。振動板上での振動刺激は,骨密度や筋機能の改善,組織血管内の血流,自律神経へ影響を及ぼすことが知られている。特に低周波数リラクセーションでは副交感神経優位になるとの報告もある。そこで本研究は,WBVによる上肢の柔軟性改善を目的とした介入と,下肢のリラクセーションを目的とした介入とで胸郭可動性及び肺機能に対する影響を検討することを目的とした。【方法】対象は健常成人男性7名。介入前評価後,WBVを実施し,直後に介入後評価を行った。評価肢位は端座位とし,胸郭拡張差と肺機能検査を実施した。胸郭拡張差は最大吸気と最大呼気の差をテープメジャーで,腋窩高,剣状突起高,第10肋骨高の3カ所で3回測定し,その差の最大値を胸郭拡張差とした。肺機能検査はスパイローメーター(フクダ電子社製Spiro Sift SP-350)を使用し,VC,FVC,FEV1を測定した。WBVの実施はPower Plate(プロティア・ジャパン社製)を使用した。上肢へのWBVは端座位,肘関節伸展位で手掌を機器に接し,下肢へのWBVは背臥位,下腿を機器に載せ行った。刺激条件は,周波数30Hz,振幅4-8mm,5分間とした。統計処理はRver2.8.1を使用し,各条件でWBV前後の値を2要因の反復測定分散分析で比較した。有意水準は5%未満とした。【結果】1)胸郭拡張差の比較(cm)腋窩高は上肢WBV前5.14±1.28,後6.79±1.78,下肢WBV前:5.57±1.67,後:5.14±1.44で,上肢実施後に有意に拡大した(p<0.05)。剣状突起高は上肢WBV前6.57±1.06,後7.5±1.68,下肢WBV前:6.57±1.06,後:5.86±2.27で,上肢実施後に有意に拡大した(p<0.05)。第10肋骨高は上肢WBV前5±1.83,後7.14±1.73,下肢WBV前:5.14±1.31,後:5.29±1.52で,上肢実施後に有意に拡大した(p<0.05)。2)肺機能の比較VCは上肢WBV前4.63±0.53,後4.87±0.55,下肢WBV前:4.88±0.51,後:4.94±0.51で,双方で実施後に有意に上昇した(p<0.05)。FVCは上肢WBV前4.84±0.53,後4.85±0.49,下肢WBV前:4.88±0.64,後:4.91±0.62,FEV1は上肢WBV前3.84±0.97,後3.99±0.72,下肢WBV前:4.23±0.49,後:4.26±0.43で,いずれも有意な変化は見られなかった。【結論】本研究の結果から,上肢に対するWBV実施後に胸郭拡張差,VCが有意に拡大,上昇したことから,上肢に対するWBVにより即時的に胸郭の柔軟性が向上し,吸気が増加することが示された。また,下肢に対するWBV実施後にもVCは有意に上昇したが,胸郭拡張差に有意な変化は見られず,腋窩高,剣状突起高では実施後に下まわる結果となった。これは測定直前に5分間の背臥位をとっていたため,一時的に胸郭の動きが阻害されたのではないかと考える。双方でFVCやFEV1では変化が見られなかったが,本研究により,上肢に対するWBVは胸郭の柔軟性,肺活量の改善に有効であると考える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205577610752
  • NII論文ID
    130005417820
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.0793
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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