高校男子サッカー選手においてHeel Buttock Distanceは柔軟性評価として有用か

  • 井上 純爾
    医療法人和幸会阪奈中央病院リハビリテーション科 医療法人和幸会阪奈中央病院スポーツ関節鏡センター
  • 山本 沙紀
    大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科
  • 佐竹 勇人
    医療法人和幸会阪奈中央病院リハビリテーション科 医療法人和幸会阪奈中央病院スポーツ関節鏡センター
  • 川原 勲
    医療法人和幸会阪奈中央病院リハビリテーション科
  • 岩田 晃
    大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科
  • 河口 泰之
    医療法人和幸会阪奈中央病院スポーツ関節鏡センター
  • 熊井 司
    医療法人和幸会阪奈中央病院スポーツ関節鏡センター

説明

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>大腿直筋などの大腿前面筋の柔軟性評価として,踵殿間距離(Heel-Buttock Distance,以下HBD)が一般的に用いられる。しかし,活動レベルが高く大腿部の筋が発達している対象者においては,大腿後面筋の厚みがHBDの制限因子となり,大腿前面筋の柔軟性を反映していない可能性が否定できない。そこで,本研究では活動レベルの高い対象者としてサッカー部に所属する男子高校生を対象とし,HBDが本当に柔軟性を反映したテストであるかを検討することを目的とした。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は高校男子サッカー選手46名とした。測定項目は,身長,体重,利き足のHBDおよび大腿周径,立位体前屈(Finger Floor Distance,以下FFD)とした。なお,利き足はボールを蹴る側として規定した。HBDは,腹臥位の対象者の膝関節を他動的に屈曲させ,踵と殿部の距離を定規にて測定した。大腿周径は膝蓋骨上縁15cmでの周径とし,メジャーにて計測した。FFDは膝関節伸展位で最大前屈させた時の床面と指尖の距離をメジャーにて計測した。データ処理は,HBDが0cmの群をHBD低値群,HBDが0cmよりも高値の群をHBD高値群として群分けし,2群間における身長,体重,大腿周径,FFDを対応のないt検定にて検討した。統計解析にはJMP10.0を用い,有意水準は5%未満とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>HBDを群分けした結果,HBD低値群は24名,HBD高値群は22名となり,HBD高値群の値は8.6±2.8cmであった。また,対象者の属性(HBD低値群:HBD高値群)は,年齢(歳)は16.2±0.7:16.2±0.9,身長(cm)170.0±5.5:171.2±6.5,体重(kg)58.6±5.8:61.3±8.2,大腿周径(cm)47.2±2.3:49.2±3.8,FFD(cm)4.5±6.4:2.6±7.3であった。t検定の結果,大腿周径においてのみHBD高値群で有意に高い結果(p<0.05)を認めたが,他の項目では有意差を認めなかった。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>全身の柔軟性には一定の関連があることがHermanらによって明らかにされているため,本研究ではHBDに加えてFFDも計測し,その関係からHBDの特性を検証した。結果より,2群間においてFFDや体重は有意差を認めず,大腿周径のみHBD低値群で有意差に高かった。すなわち,HBDは柔軟性の指標として有用とは言えず,大腿部の筋量によって変化することが示唆された。また,体重も群間で差を認めなかったため,単なる体格の差ではなく,大腿部の筋の発達がHBDに影響していることが考えられた。以上より,HBDを評価指標として用いる際,サッカー選手のような大腿部の筋群が発達している対象者に対しては注意が必要ということが示された。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2016 (0), 1291-, 2017

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205577621760
  • NII論文ID
    130005609364
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.1291
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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