関節拘縮に対する対策の効果と課題
書誌事項
- タイトル別名
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- ―膝関節伸展可動域の経時的変化と筋収縮の状態から検証―
説明
【はじめに,目的】関節拘縮の直接的原因として関節の不動があり,その要因の一つとして過剰な筋収縮があげられる。疾患を抱える高齢者においては二次的な障害や加齢なども加わることから不活発な生活に陥りやすく,その結果,過剰な筋収縮を招き関節拘縮が発生しやすい状態になることが推測される。一度発生した関節拘縮は改善が困難といわれ早期からの予防が重要であることは周知の事実であるが,高齢者における拘縮予防としての対応は確立されておらず,また高齢者に限らず筋収縮の程度による対応効果の違いについての報告も少ない。そこで今回は筋収縮の程度別に膝関節伸展可動域の経時的変化を示し,対策の効果と今後の課題について報告する。【方法】対象は2012年8月から2015年8月の期間を通して入院していた患者のうち「障害高齢者の日常生活自立度」がランクBの患者67名(男性9名,女性58名)とした。2012年8月時点における対象者の平均年齢は87.8±4.9歳,平均在院期間は2年9ヵ月であった。拘縮予防のための対応として看護・介護職員によるケアの中での下肢他動運動と理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による下肢への荷重を意図的に含めた運動プログラムを実施し,さらには日中の活動性が高まるよう多職種による様々な余暇活動を提供した。効果検証には2ヵ月ごとに測定した膝関節屈筋群のmodified Ashworth scale(以下:MAS)と膝関節伸展可動域を用いた。対象者は期間を通じてMAS0もしくは1の53名(101関節)をI群,期間を通じてMAS1+以上の19名(33関節)をII群に区分し,各年における8月時点での両群の経時的変化を比較した。統計処理には反復測定による分散分析を用い有意水準は5%未満とした。【結果】I群の膝関節伸展可動域は-8.2°,-9.4°,-9.5°,-10.1°,II群においては-16.2°,-17.3°,-21.8°,-22.6°と推移し,交互作用には有意差を認めた(p<0.05)。【結論】今回の対象者は日常生活の中で車椅子を使用する頻度が高く,歩行や立位で諸動作をおこなう機会は減少していることから関節拘縮の発生・進行のリスクは高いと考えられる。3年間の経時的変化でII群において6.4°の進行が認められ,これまでの予防対策が過剰な筋収縮がある病態では効果が十分得られないことが示された。今後は過剰な筋収縮を抑制する対策を関節運動や関節自体への荷重などと合わせて行い,効果検証を継続する必要があると思われる。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2015 (0), 1412-, 2016
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205577832960
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- NII論文ID
- 130005418402
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可