肺切除術患者における6分間歩行テスト中の30秒毎循環応答およびSpO2経時的変化

DOI
  • 吉永 龍史
    国立病院機構熊本医療センターリハビリテーション科
  • 蓬原 春樹
    国立病院機構宮崎病院リハビリテーション科
  • 本田 真之介
    国立病院機構宮崎東病院リハビリテーション科
  • 椎木 陽啓
    国立病院機構宮崎東病院リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>肺切除術後は,肺毛細血管床の減少により,心臓に対して後負荷が増大すると言われている。以前我々は,肺切除術後患者において術前と術後14日目(以下,POD14)の6分間歩行距離(以下,6MD)に加え,30秒毎循環応答変化も同様であったことを報告した。一方,術前値まで6MDが改善するPOD14以内の術後の経時的な循環応答変化についてはまだ明らかになっていない。</p><p></p><p>本研究目的は,術前と術後4日,7日および14日の6分間歩行テスト時の30秒毎循環応答変化の比較とその特徴について明らかにすることとした。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は,原発性肺癌に対する肺切除術を施行した42例とした。基本属性は,男性22名,女性20名,年齢69.3±10.0歳,肺活量2.75±0.66L,1秒率80.1±15.2%であった。術式は,胸腔鏡補助下肺切除術40名,標準開胸2名であった。</p><p></p><p>方法は,術前,POD4,POD7およびPOD14の測定時期に米国胸部医学会標準法に準拠し6MDを測定した。その際,患者にパルスオキシメータ(TEIJIN PULSOX-SP)を装着し,脈拍数(PR)とSpO2を開始0秒から30秒毎に10分間記録した。患者は6MDが終了する6分後から10分まで端座位で休憩した。</p><p></p><p>統計解析は,6MD,10分間測定したPRあるいはSpO2変化それぞれに対しての10分間30秒毎の各要因と,同時間の測定時期について反復測定分散分析を適用後,多重比較Bonferroni法を用いた。いずれも有意水準は両側5%未満とした。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>6MDは,術前が390.4±80.9m,POD4が326.4±95.2m,POD7が373.2±91.7mおよびPOD14が377.5±84.7mで術前と比べPOD4のみが有意に低下(p<0.001)していた。</p><p></p><p>PR経時的変化は,すべての測定時期の同時間の間に有意差を認めなかった。PR変化の特徴は,POD4が開始0秒79.5±12.4bpmから1分90.0±12.6bpmまで有意にPRが増加し,1分後から6分まで定常状態となった。そして,6MD終了6分後から7分までにかけて有意にPRが83.6±11.1bpmまで低下し,その後10分まで一定に経過した。</p><p></p><p>SpO2経時的変化は,術前と比べPOD7が4分30秒と5分の間に,POD14が5分,5分30秒および6分の間に有意な低下(p<0.05)を認めた。POD4,7および14のSpO2同時間の間にすべて有意差を認めなかった。SpO2変化の特徴は,POD7の中央値(四分位範囲)が開始0秒で97(93-97)%から30秒の94(89-94)%まで有意に低下(p<0.05)したが,その後6分の92(87-94)%まで定常状態となった。その後,6分から6分30秒の95(87-95)%まで有意にSpO2が上昇(p<0.01)したが,その後10分まで一定に経過した。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>肺切除術後の6分間歩行テスト時の循環応答変化はすべての測定時期で同様であった。また,SpO2変化は,術前と比べPOD7およびPOD14の5分前後で有意に低下するため6MD時のこの時間帯のリスク管理に特に注意すべきである。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205578129536
  • NII論文ID
    130005608858
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0778
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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