慢性閉塞性肺疾患と間質性肺炎における心機能と運動耐容能の比較

DOI
  • 善田 督史
    国際医療福祉大学臨床医学研究センター化学療法研究所附属病院リハビリテーション室

抄録

<p>【目的】</p><p></p><p>近年,呼吸器疾患において,心臓超音波検査(心エコー)の精度向上により,心エコーを用いた心機能評価が着目されている。慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者は,軽症の段階から心機能低下を合併しており(Ramsey R:2010),運動耐容能とも関連している(Wats H:2010)。COPD患者の安静時における心機能評価は散見されるが,IPに関する心機能評価は少なくCOPDとIPの心機能を比較した報告はない。そこで,本研究は,COPD患者とIP患者の心機能や運動耐容能を比較検討した。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は,2014年~2015年における入院時のCOPD患者20名(年齢79.5±4.8歳),間質性肺炎(IP)患者15名(年齢76.3±3.6歳)とし,2群間で比較した。COPD国際ガイドライン(GOLD)の分類は,II:5名,III:10名,IV:5名であった。間質性肺炎の内訳は,特発性肺線維症(IPF):11名(日本呼吸器学会の重症度分類II:3名,III:4名,IV:4名),薬剤性:3名,膠原病関連性:1名であった。酸素療法使用者はCOPD群15名・IP群5名おり,安静時と運動時共に鼻腔カヌラO2 1~3.0 L/minを使用していた。心機能評価項目は,LVEF・LV E/e'・RVSPを測定した。運動耐容能として,6分間歩行試験(6MWT)にて6分間歩行距離(6MD)を測定し,6MWT時の呼吸困難を修正Borg scaleで評価した。また,低酸素血症の評価として6MWT時のSpO2最低値を測定した。統計解析は,SPSSを用い有意水準5%とした。群間比較にはMann-Whitney U testを用いた。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>COPD群・IP群の比較において,心機能では,LV EF 67.3・72.4%(p=0.50),LV E/e':8.21・10.65(p<0.05),RVSP:36.3・40.7 mmHg(p=0.34)であった。運動耐容能において,6MWD:242 m・204 m(p=0.35),呼吸困難(修正Borg scale):4.3・4.8(p=0.35),SpO2最低値:88.7・85.1%(p<0.05)であった。</p><p></p><p></p><p>【考察】</p><p></p><p>心機能評価において,左室拡張機能(LVE/e')のみ,IP群が有意に高値であった。また,IP群でより労作時における低酸素血症が著明であった。Funk GCらより,COPD患者において低酸素血症は肺動脈圧上昇を招き,右室負荷により左室を中隔から圧排し,結果として左室は収縮機能低下よりも拡張障害を呈するとしている。IP患者はより労作時低酸素血症が著明なため,心負荷となり心機能低下を助長していると考えられた。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>COPD同様にIP患者においても,低酸素血症が左室拡張機能低下に影響を及ぼしていた。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205578131328
  • NII論文ID
    130005608861
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0775
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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