末梢神経損傷モデルラットに対する運動介入が神経筋接合部の形態変化に与える影響

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抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>末梢神経損傷後の運動療法は従来から広く施行されており,末梢神経損傷後に旺盛な神経再生が起こることはよく知られている。しかし,直接神経再生に及ぼす影響に関して未だ一定した見解は得られておらず,二次的障害予防のための装具作成などの介入が中心となっている現状がある。そこで本研究は,坐骨神経圧挫による末梢神経損傷モデルラットに対する低負荷運動介入が,神経可塑性に与える影響を明らかにするために,末梢神経損傷後の運動介入の有無による神経筋接合部(以下NMJ)の形態変化を蛍光免疫組織化学染色により組織学的に検討するとともに,末梢神経損傷後の早期運動療法の意義確立に資することを目的とした。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>Wistar系雄性ラット10週齢18匹を対象とした。対照群(以下sham群),坐骨神経圧挫群(以下SC群),坐骨神経圧挫後に運動介入群(以下SC-Ex群)の3群に6匹ずつ無作為に振り分けた。SC群とSC-Ex群に対し,両側の坐骨神経近位側を-100度に冷却したクリップで3分間圧挫した。Sham群は坐骨神経を露出後,圧挫はせず筋と皮膚を縫合した。SC-Ex群に対し,神経圧挫後2日目より外乱刺激装置(回転角度±7度,回転速度20rpm)を用いて低負荷運動介入を行った。期間は4週間,週に5日間,1日1時間実施した。各群ともに処置後4週経過時点で,左後肢の長趾伸筋(以下EDL),ヒラメ筋(以下SOL)を採取した。採取後,凍結包埋し厚さ60μmで縦切した。一次抗体として抗neurofilament(以下NF)抗体,α-bungarotoxin(以下α-BTX)を,二次抗体としてCy3を用いてNMJの形態を蛍光免疫組織化学染色により組織化学的に検討した。蛍光顕微鏡にて観察し,画像解析にはImageJを使用してα-BTXの蛍光領域を計測し,各群で比較検討した。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>各群でα-BTXの蛍光領域を比較した(平均値±SE,μm2)。EDLではSham群で349.9±41.3,SC群で135.1±16.4,SC-Ex群で121.9±13.0であった。SOLではSham群で237.8±96.3,SC群で65.7±12.7,SC-Ex群で146.9±0.0であった。また,SC群に比べSC-Ex群ではEDLとSOLともに,end plateへと侵入するNFが多く観察された。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>末梢神経損傷後の運動介入の有無によるNMJの形態変化を,損傷後4週時点で組織学的に検討した。EDLとSOLともにsham群に比べ,坐骨神経を圧挫したSC群とSC-Ex群ではα-BTXの蛍光領域が減少しており,NMJに変性が生じていることを示した。SC群とSC-Ex群で著明な差は認められず,運動介入の有無によるNMJの形態変化は示さなかった。しかし,SC-Ex群ではSC群に比べend plateへと侵入するNFが多く観察された。以上のことから,運動介入の有無によるNMJの形態変化は認められなかったが,低負荷運動介入によりNF再生が促進されたことが示唆された。今後は,末梢神経損傷後の経時的なNMJの形態変化の分析,並行して電気生理学的分析を行い,末梢神経損傷後の運動療法の意義確立へとつなげる必要がある。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205578194048
  • NII論文ID
    130005608698
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0744
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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