老化性筋萎縮に対する定量的な伸張刺激の効果

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抄録

<p>【はじめに,目的】近年,加齢により生じる老化性筋萎縮と転倒率等の関係性が多く報告され,転倒,骨折,寝たきりといった悪循環を引き起こさないために,その予防を目的とした理学療法が様々な方法で行われている。しかし高齢者では,高負荷の筋力トレーニングが実施困難である場合が多く,より低負荷でも老化性筋萎縮の進行を軽減できる方法が求められる。一方これまでに,坐骨神経切除ラットに対して他動的な足関節背屈運動による周期的伸張刺激を加え,廃用性筋萎縮を22%軽減できることを明らかにしてきた。そこで,この周期的伸張刺激が老化性筋萎縮の進行の軽減に対しても効果的であるかどうか明らかにすることを目的とした。</p><p></p><p>【方法】Wistar系高齢ラット(雄性,450-620g,n=30)を対象に,他動的な足関節の背屈運動を1日1回7日間行い,足関節底屈筋群に周期的伸張刺激を与えた(St群)。周期的伸張刺激は小動物用足関節運動装置(BRC)を用い,ラット足関節を角速度45 deg/sで,底屈方向に加わるトルクが8mNmに達するまで背屈させ,そのトルクで5秒間保持した。その後,トルクが0mNmに達するまで,角速度45 deg/sで底屈させ,その角度で5秒間保持した。この伸張刺激を15分間繰り返した。伸張刺激開始0,3,7日目のラットから各々ヒラメ筋,足底筋を採取,凍結横断切片を作製し,ヘマトキシリン-エオシン染色を施した。その染色像から筋線維横断面積を測定した。なお,対象群として伸張刺激を行わない高齢ラットを作製し(NSt群),伸張刺激の有無による筋線維横断面積の違いを比較した。</p><p></p><p>【結果】NSt群のヒラメ筋の筋線維横断面積は,伸張刺激開始時(768±88μm2)に比べ,3,7日目の筋で有意な差がなかった(3日目;891±78μm2,7日目;748±72μm2)。足底筋の筋線維横断面積は,伸張刺激開始時(1026±61μm2)に比べ,3,7日目の筋で有意に小さかった(3日目;898±128μm2,7日目;778±123μm2)。St群のヒラメ筋の筋線維横断面積は,伸張刺激開始時に比べ,3日目の筋で有意に大きかったが,7日目の筋は伸張刺激開始時や同時期のNSt群の筋と比べ有意な差がなかった(3日目;1033±28μm2,7日目;729±44μm2)。足底筋の筋線維横断面積は,伸張刺激開始時に比べ,3,7日目の筋で有意に小さく,同時期のNSt群の筋と変わらなかった(3日目;856±64μm2,7日目;728±143μm2)。</p><p></p><p>【結論】高齢ラットにおいて1週間という短い期間でも,特に足底筋が著明に萎縮した。この進行する老化性筋萎縮に対して,廃用性筋萎縮の進行軽減に効果的な周期的伸張刺激を行っても,進行を軽減する効果は不十分であった。今後,各筋を構成する筋線維タイプの違いにも着目した上で,老化性筋萎縮に対して効果的な種々刺激の負荷量や頻度等の方法を検討する必要がある。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205578222464
  • NII論文ID
    130005608709
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0731
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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