足関節機械的不安定性に対する鏡視下前距腓靭帯/踵腓靱帯再建術で片脚立位時重心動揺が改善した1例

DOI

抄録

【はじめに,目的】足関節機械的不安定性(MAI)は靱帯構造的破綻や機能不全などで起き,慢性足関節不安定性(CAI)の因子の一つである。CAIは関節構造的安定性,固有受容感覚能,姿勢制御能,足関節周囲筋の筋力などが低下し,足関節捻挫再発リスクの一つとされている。近年,MAIに対する前距腓靱帯(ATFL)/踵腓靱帯(CFL)再建術の整形外科分野での術後成績の報告が散見されるが,身体機能については明らかではない。今回,慢性MAIに対して鏡視下ATFL/CFL再建術を施行した症例の術前後での片脚立位時重心動揺測定および患者立脚型評価をする機会を得たので報告する。【方法】症例は15歳,X-1年6月にバスケットボール練習中に非接触で足関節捻挫を受傷。競技復帰するもX-1年8月に再受傷。再受傷後は疼痛,不安定感が強く残存し,競技復帰困難となった。陳旧性右ATFL損傷,陳旧性右外果裂離骨折,右三角靭帯損傷と診断され,X年2月13日に術側薄筋腱を用いた鏡視下ATFL/CFL再建術,外果裂離骨片切除が施行された。術後の理学療法は術後2日目から底背屈のみの関節可動域練習,術後5日目から装具装着下での歩行練習,術後1か月からジョギングを開始。術後2か月から部分的競技復帰,術後3か月で完全復帰した。術前・術後6か月の単純X線でのストレス撮影(アイメディック社製テロスSE)による踵骨傾斜角(TTA)と踵骨前方引き出し距離(ADT),術前・術後3か月の日本足の外科学会足関節・後足部判定基準(JSSF)はカルテから抽出した。片脚立位時重心動揺は,術前・術後3か月に重心動揺計(共和電業)を用いて測定した。測定条件は裸足で支持脚膝関節は伸展,遊脚膝関節は軽度屈曲とし,視線は被験者の目の高さの正面の壁を注視させた。記録時間は10秒間とし,足底圧中心の総軌跡長を解析項目とした。測定順は「右,左,左,右」とし,患側,健側の最小値を抽出した。患者立脚型評価は術前・術後6か月に足部足関節評価質問票(SAFE-Q)を実施した。【結果】術前後の比較は術前/術後の順に記載する。MAIはTTA11.4度/6.4度,ADT8mm/4.6mmで改善が認められた。JSSFは疼痛30点/40点,機能39点/50点,アライメント10点/10点,合計79点/100点で改善が認められた。重心動揺の総軌跡長は術側36.3cm/35.7cm,健側40.0cm/28.8cmで改善が認められた。SAFE-Qの痛み・痛み関連72.5点/81.2点,身体機能・日常生活機能の状態90.9点/97.7点,社会生活機能54.2点/100点,靴の関連100点/100点,全体的健康感90点/100点,スポーツ47.8点/94.1点で改善が認められた。【結論】本症例は慢性MAI(GradeIII)を呈し,競技復帰困難であった。鏡視下ATFL/CFL再建術を施行した結果,JSSF,重心動揺の総軌跡長およびSAFE-Qが改善し,競技復帰することができた。鏡視下ATFL/CFL再建術は,重心動揺の総軌跡長を改善させるため,姿勢制御能の観点から足関節捻挫の再発予防に有効である可能性が考えられた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205578284928
  • NII論文ID
    130005418275
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.1282
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ