当院の地域包括ケア病棟における整形外科疾患患者のFIM分析

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  • ―入棟時の下肢機能評価から退院時ADLを予測する―

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>当院の地域包括ケア病棟(60床)のリハビリ対象者は約8割が整形外科疾患であり,内約7割が65歳以上の高齢者である。第51回本学会において,上述患者の退院時ADLに対する影響因子として「入棟時FIM運動項目自立の成否」を報告した。本研究の目的は前研究結果を受け,入棟時の下肢機能評価から退院時ADLの中でも特に移乗・移動能力の自立度を予測する事である。</p><p></p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は,当院地域包括ケア病棟に入棟した65歳以上の整形外科疾患患者の内,本研究に同意を得た35名(男性2名,女性33名,年齢78.1±6.3歳)である。入棟時の下肢機能評価として,下肢筋力,筋パワー,立位バランスを評価した。方法は,ハンドヘルドダイナモメーター(モービィ;酒井医療社製)による椅子座位下腿下垂位での等尺性膝伸展筋力の計測,椅子座位からの5回立ち座りに要する時間の計測,下肢荷重率の計測(市販体重計2枚に左右の脚を乗せた立位で片側下肢に最大限体重を偏位させ,5秒間静止できた荷重量(kg)を体重(kg)で除した値(%)の算出)とした。この他,後方視的に入棟時・退院時FIMと退院時TUGを抽出した。退院時FIMにおける移乗・移動項目自立者24名を「自立群」,要介助者11名を「介助群」とし,それら2群の入棟時下肢機能評価の結果をMann-WhitneyのU検定で比較した。更に,従属変数を「退院時FIM移乗・移動項目自立の成否」,独立変数を「下肢筋力」「筋パワー」「立位バランス」としてロジスティック回帰分析を行った。加えて,回帰分析の結果,最も貢献度の高い変数と,高齢者の転倒予測因子であるTUGとの相関分析をSpearmanの方法で行った(全て有意水準5%)。</p><p></p><p></p><p></p><p>【結果】「自立群」は「介助群」に比べ,「筋パワー」「立位バランス」は高かったが(p<0.01)「下肢筋力」では有意差を得なかった。「退院時FIM移乗・移動項目自立の成否」に影響する変数は「筋パワー(偏回帰係数:0.108,オッズ比:1.114,p=0.091)」と「立位バランス(偏回帰係数:-0.136,オッズ比:0.873,p=0.014)」が選択され,その変数は「立位バランス」のみ有意であり,判別的中率は77.1%であった。この「立位バランス」の評価方法である下肢荷重率と退院時TUGとの相関係数はr=-0.65(p<0.01)であり,負の相関が得られた。</p><p></p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>入棟時の下肢機能評価の内,退院時の移乗・移動能力自立度を予測する指標として筋パワーと立位バランスの有用性が示された。筋パワーは筋力より加齢による低下率が大きい旨が報告されており,転倒や動作能力との関連も強いとされている。立位バランスはTUGとも相関が得られた事から,退院時の移乗・移動項目の自立度予測だけでなく,転倒リスクを知る上でも重要な指標と言える。体重計を用いた下肢荷重率測定は比較的安全且つ簡便に施行できるので,地域包括ケア病棟入棟前から定時的に評価し,更にその他の下肢機能評価と組み合わせる事で退院に向けた予後予測において,より詳細な考察が可能になると言える。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205578346880
  • NII論文ID
    130005609578
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.1507
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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