高齢者における足趾圧迫力測定の有用性

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抄録

<p>【はじめに,目的】足趾の把持力と圧迫力は高齢者のバランス機能に関与するため,足趾の機能評価として測定意義が高い。把持力は専用機器や握力計での測定法を用いるが,圧迫力は測定法が確立しておらず,把持力との関連性も明確ではない。我々は若年者を対象として徒手筋力計(Hand-held Dynamometer;HHD)を用いた圧迫力測定を検証し,測定値の再現性と妥当性が高いことを報告したが,高齢者を対象としたバランス機能との関連性も含めた検討が課題となった。本研究の目的は高齢者におけるHHDを用いた足趾圧迫力測定の有用性を検証することである。</p><p></p><p></p><p>【方法】対象は健常高齢者77名(男性14名,女性63名,平均年齢:73.5±7.3歳),測定下肢は右とした。圧迫力と把持力の測定肢位は股,膝90度屈曲位,足部中間位の端座位とした。圧迫力測定はHHD(mobie MT100,酒井医療社製)を用い,中足骨頭から遠位足底面をHHDに,それ以外の足底面はHHDと同じ高さの台に載せた。測定時は検者が測定側の下腿遠位部を固定し,足趾でHHDを押すように指示した。把持力は我々が測定値の再現性と妥当性を報告している握力計を用いた方法で測定した。施行順をランダムとし,各々2回の平均値を求め,体重で除した値を把持力,圧迫力(kgf/kg)として採用した。前脛骨筋(TA),ヒラメ筋(Sol),母趾外転筋(AbdH)の筋活動を表面筋電図計(TeleMyo2400,Noraxon社製)で計測,各筋の最大収縮時の筋電値で正規化して筋活動量を求めた。足趾角度の指標として母趾MP屈曲角と外反母趾角(HVA)を計測した。バランス機能も含めた移動機能の指標としてロコモ度テストの立ち上がりテスト(起立)と2ステップテスト(2STEP)を採用した。圧迫力と把持力の検者内信頼性をICC(1,1),圧迫力と把持力,および両測定値と足趾角度の関連性をSpearmanの相関係数,圧迫力と把持力の測定値間,被験筋間の筋活動量の比較を二元配置分散分析にて検討した。ロコモ度テストを従属変数,圧迫力,把持力,足趾角度を独立変数,性別,年齢,身長,体重を調整変数とした重回帰分析を行った。有意水準を5%とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】圧迫力,把持力のICC(1,1)は0.92,0.93であった。圧迫力は把持力,把持力は母趾MP屈曲角と有意な相関を認めた(r=0.46,0.37)。圧迫力は足趾角度と相関を認めなかった。筋活動量はTAで把持力,SolとAbdHで圧迫力が高く,被験筋間は圧迫力でAbdHが高かった。重回帰分析の結果,起立は把持力(F=6.3),2STEPは圧迫力(F=9.5)とHVA(F=10.6)が有意に選択された。</p><p></p><p></p><p>【結論】圧迫力と把持力は関連する足趾機能とパフォーマンスが異なり,圧迫力は高齢者の前方推進力としての移動機能を評価する一指標として有用となる。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205578485376
  • NII論文ID
    130005608410
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0405
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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