廃用性筋萎縮に対するストレッチングに加える力の違いが筋線維短径に与える経時的な影響

DOI
  • 石倉 英樹
    広島都市学園大学健康科学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 小野 武也
    県立広島大学保健福祉学部理学療法学科
  • 相原 一貴
    県立広島大学大学院総合学術研究科
  • 佐藤 勇太
    県立広島大学大学院総合学術研究科
  • 松本 智博
    神戸大学大学院保健学研究科
  • 田坂 厚志
    大阪保健医療大学保健福祉学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 梅井 凡子
    県立広島大学保健福祉学部理学療法学科
  • 積山 和加子
    県立広島大学保健福祉学部理学療法学科
  • 沖 貞明
    県立広島大学保健福祉学部理学療法学科
  • 大塚 彰
    広島都市学園大学健康科学部リハビリテーション学科理学療法学専攻

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>臨床では,ギプス固定などの不活動状態で生じた廃用性筋萎縮に理学療法介入を行う。骨格筋のストレッチングは筋線維肥大効果が報告されている。ストレッチングに加える力は愛護的に行うほうがよいとされているが,定量的にどの程度の力を加えればよいのか十分検討されていない。そこで本研究は発生した廃用性筋萎縮に対し,異なる2つの力でストレッチングを行い,その後の筋線維短径の経時的な変化を比較してストレッチングに適した力を検討した。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>実験動物は9週齢のWistar系雄ラット36匹を使用した。すべてのラットは両後肢を足関節底屈位で保持して4週間関節固定を実施した後,背屈ストレッチングを0.3 Nの力で行う0.3 N群(18匹),3.0 Nの力で行う3.0 N群(18匹)の2群に分けた。その後,ストレッチング直後(6匹),3日後(6匹),7日後(6匹)にヒラメ筋の形態観察を行った。</p><p></p><p>背屈ストレッチングは加える力として正常なラット足関節を最小限の力で全範囲動かせる0.3 N,使用したラット体重(300.2±6.5 g)と同等の3.0 Nを採用し,実施時間を30分間とした。</p><p></p><p>形態観察は麻酔下にてラットを屠殺し,ヒラメ筋を摘出して横断切片を作成してヘマトキシリン・エオジン染色(以下,HE染色とする)を行った。HE染色後,ヒラメ筋組織の横断切片を200倍の拡大像で撮影し,標本毎に200本以上の筋線維短径の計測を実施してその平均値を求めた。</p><p></p><p>統計処理はストレッチング直後,3日後,7日後のそれぞれで0.3 N群と3.0 N群を比較した。正規性をShapiro-Wilk検定にて確認し,正規性が見られた場合には対応のないt検定を,正規性が見られなかった場合はMann-Whitney U testを行った。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>ヒラメ筋のHE染色像において,0.3 N群は3日後に細胞間質に浮腫が発生しているが,7日後には軽減していた。一方で3.0 N群は3日後に細胞間質に浮腫が発生し,7日後でも浮腫が残存していた。</p><p></p><p>0.3 N群の筋線維短径はストレッチング直後で45.8±3.3 μm,3日後で50.7±2.9 μm,7日後で56.3±3.3 μmであった。3.0 N群の筋線維短径はストレッチング直後で46.0±1.3 μm,3日後で45.2±3.2 μm,7日後で49.5±3.0 μmであった。統計処理の結果,各時期において2群は正規分布に従うことが認められたため対応のないt検定を実施した。その結果,3日後・7日後の筋線維短径は3.0 N群に比べて0.3 N群が有意に大きかった。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>本研究ではヒラメ筋線維の短径は3.0 N群と比較して0.3 N群が増加しており,正常な関節を最小限の力で全範囲動かせる程度の力が筋萎縮からの回復に適していることがわかった。一方で体重と同等の力を用いた3.0N群は筋線維の浮腫が残存しており,筋線維に大きく損傷を加えたことが推察された。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205578504448
  • NII論文ID
    130005608441
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0438
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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