不動化したラットヒラメ筋における筋核数の変化がマクロファージの動態におよぼす影響

DOI
  • 田中 なつみ
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻理学・作業療法学講座理学療法学分野
  • 本田 祐一郎
    長崎大学病院リハビリテーション部 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻リハビリテーション科学講座運動障害リハビリテーション学分野
  • 片岡 英樹
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻リハビリテーション科学講座運動障害リハビリテーション学分野 社会医療法人長崎記念病院リハビリテーション部
  • 坂本 淳哉
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻理学・作業療法学講座理学療法学分野
  • 中野 治郎
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻理学・作業療法学講座理学療法学分野
  • 沖田 実
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻リハビリテーション科学講座運動障害リハビリテーション学分野

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>所属研究室の先行研究では,1,2週間,骨格筋を不動に曝すと線維化が惹起され,筋性拘縮が発生するが,この分子機構にはマクロファージの集積を発端としたIL-1β/TGF-β1シグナリングの活性化が関与すると報告されている。しかし,このマクロファージ集積のメカニズムに関しては,これまで明らかにできていない。一方,筋性拘縮発生時には筋線維萎縮が併発し,このメカニズムにはアポトーシスの誘導による筋核数の減少が影響すると報告されている。つまり,筋核にアポトーシスが誘導されるとその筋核が制御していた細胞質領域の貪食のためにマクロファージが集積すると仮説できる。そこで,本研究では1,2週間不動化したラットヒラメ筋を検索材料に,上記の仮説を検証した。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>実験動物には8週齢のWistar系雄性ラット20匹を用い,両側足関節を最大底屈位にてギプスで1,2週間不動化する不動群(各5匹,計10匹)と同週齢まで通常飼育する対照群(各5匹,計10匹)に振り分けた。各不動期間終了後は各ラットの足関節背屈可動域を測定し,採取したヒラメ筋から凍結横断切片を作製した。そして,抗ジストロフィン抗体に対する免疫組織化学染色ならびにヘマトキシリンによる核染色を施し,各筋試料につき100本以上の筋線維について横断面積と筋核数を計測した。加えて,各筋線維について横断面積を筋核数で除したデータを1つの筋核が制御する細胞質領域,すなわち筋核ドメインと規定し,上記と同様に100本以上の筋線維について算出した。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>不動群の足関節背屈可動域と筋線維横断面積は不動1,2週とも対照群より有意に低値を示し,不動期間で比較すると不動2週は不動1週より有意に低値を示した。また,不動群の筋核数は不動1週で対照群より有意に低値を示したが,不動期間による有意差は認められなかった。さらに,不動群の筋核ドメインは不動1週では対照群と有意差を認めなかったが,不動2週では対照群より有意に低値を示した。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>足関節背屈可動域の結果から,筋性拘縮は不動1週から発生していたと考えられる。そして,筋線維横断面積の結果は筋線維萎縮が不動1週で発生し,不動2週でさらに進行することを示唆している。加えて,不動1週で筋核数は有意な減少を認め,これは筋核のアポトーシスが影響していると推察される。一方,筋核ドメインは不動2週でのみ有意な減少を認めた。つまり,不動1週での筋線維萎縮には筋核数の減少が直接的に影響し,不動2週での筋線維萎縮の進行には,このことに加え,筋構成タンパク質の分解亢進が影響していると推察される。したがって,不動1週でのマクロファージの集積は筋核が制御していた細胞質領域の貪食のためではないかと推察され,このことが発端となって線維化発生の分子機構が活性化するのではないかと考えられる。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205578512896
  • NII論文ID
    130005608555
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0466
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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