傾斜台上立位保持がパーキンソン病患者の安定性限界と歩行に与える即時効果

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抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>パーキンソン病(PD)患者の立位バランスの特徴として,前方の安定性限界の狭小化があげられる。ここで,安定性限界とは両足部の支持基底面内で足圧中心(COP)を移動できる最大範囲のことである。傾斜台上立位保持は,健常者と片麻痺患者に対して,COP位置の前方変位と前後の安定性限界を拡大させる効果があることが報告されている。また,PD患者において歩行速度および歩幅と前方の安定性限界との間に正の相関があることも報告されている。しかし,PD患者を対象に傾斜台上立位保持の効果を検討した研究は演者らの知る限りない。本研究の目的は,傾斜台上立位保持がPD患者の前方の安定性限界と歩行に与える即時効果を検討することだった。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は歩行が自立しているPD患者20名だった。介入として60秒間の傾斜台上立位保持を行う実験群と,平地上で最大前傾した肢位を10秒間保持する運動を連続して4回行うコントロール群の2群に,10名ずつ無作為に割り当てた。両群ともにHoehn-Yahr分類IIが3名,IIIが3名,IVが4名であり,実験はon時に実施した。介入前後のテスト課題は10m歩行試験と10秒間の最大前傾位保持(FW:Forward leaning)だった。歩行課題では通常の歩行速度での快適条件と最大歩行速度での速歩条件の2条件を実施した。また,歩行課題では歩行分析計を用いて歩行速度,歩幅,歩行率を算出し,FW課題ではバランスWiiボードを用いてCOP位置を算出した。これらの指標について介入法(実験群,コントロール群)と課題(介入前,介入後)を要因とする二元配置分散分析を行い,Bonferroni法を用いて多重比較した。また,快適条件と速歩条件において,歩行の指標とCOP位置との間の関連性をPearsonの相関分析を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>FW課題ではCOP位置において有意な交互作用を認めた。実験群で介入後は,COP位置の有意な前方への変位が認められた(p<0.05)。歩行課題では速歩条件で歩幅において有意な交互作用を認めた。実験群で介入後は,歩幅の有意な増加が認められた(p<0.05)。一方,コントロール群にはCOP位置と歩幅ともに有意差が認められなかった。また,速歩条件において,歩幅とCOP位置との間に有意な中等度の相関を認めた(r=0.47,p<0.05)。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>COP位置の結果から,傾斜台上立位保持はPD患者の前方の安定性限界を増加させる即時効果があることが示された。また,歩行課題にでは速歩条件において歩幅を増加させる効果が示され,歩幅と前方の安定性限界との間に有意な相関関係を認めた。傾斜台上立位保持は健常者においてハムストリングスや下腿三頭筋などの筋活動を向上させる効果が示されていることから,下肢後面の筋活動をより要求する速歩条件において傾斜台上立位保持の即時効果が得られやすかったと考えられる。以上の結果から,傾斜台上立位保持はPD患者にとって有効な運動療法であると示唆される。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205578547072
  • NII論文ID
    130005608998
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.1050
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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