急性期脳卒中患者における栄養摂取方法の違いによる安静時エネルギー消費量の比較

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抄録

【はじめに,目的】脳卒中治療ガイドラインにおいて,低栄養例では急性期から十分なカロリーや蛋白質などの補給が推奨されている。また,脳卒中発症前および急性期の低栄養はリハビリテーションにおける予後不良因子であり,筋力・耐久性の改善の阻害因子になるため,急性期から適切な栄養管理が行われるべきである。そこで,本研究は,その前提として,急性期脳卒中患者の栄養摂取方法の違いによる安静時エネルギー消費量(REE)を比較検討することを目的とした。【方法】対象は,平成26年1月から10月までに当センターに入院した急性期脳卒中患者12名(男性6名・女性6名,年齢76.1±7.7歳,脳梗塞7名・脳出血5名)で,REE測定までの期間は7.6±2.9日であった。栄養摂取方法の違いにより,対象を経管栄養群(経管群,5名)と経口摂取群(経口群,7名)に分類し,以下の項目で群間比較した。REEは携帯型呼気ガス代謝モニター(Cortex社製MetaMax3B)を使用した。REEをHarris Benedictの式による基礎エネルギー消費量(BEE)で除して比(%REE)にし,代謝量の指標とした。身体所見の指標は体重減少率とした。REE測定日に体重測定を行い,3-4週後に再び体重測定を行って算出した。機能障害の指標は,SIASの運動項目総得点(SIAS-M)およびNIHSSの得点とした。検定には,対応のあるt検定またはMann-WhitneyのU検定を用いた。有意水準は5%未満とした。【結果】%REEは経管群119.2±15.4%,経口群153.8±19.3%で両群ともにBEEより亢進しており,特に経口群が有意に高値であった(p<0.05)。体重減少率は経管群8.3±1.2%,経口群2.3±5.4%で両群に有意な差は認められなかったが,経管群で高い傾向にあった。SIAS-Mは経管群3.6±5.1点,経口群8.4±4.5点で両群に有意な差は認められなかったが,経管群で低い傾向にあった。NIHSSは経管群15.2±3.2点,経口群7.3±5.2点で経管群が有意に高値であった(p<0.05)。【結論】今回の検討では,急性期脳卒中患者は代謝が亢進しており,従来の報告と同様の結果となった。また,経管群では経口群より代謝亢進の比率が小さかったが,体重減少率は高かった。加えて,経管群ではSIAS-Mが低い傾向にあり,NIHSSが有意に高値であった。これは経管群において神経症状が重症であることを示しており,運動麻痺が重症であれば麻痺側の筋萎縮は進行しやすく,筋代謝は低下すると考えられる。しかし,脳卒中を発症しやすい高齢者では胃の容量が小さく,経管栄養では栄養提供量に限界があるため,重症度が高ければ代謝亢進が少なくても体重減少率は高くなる可能性が示唆される。一方,経口群では代謝がより亢進しているが,体重減少率は低かった。よって,栄養管理は経口摂取している方が行いやすいと推察される。以上より,急性期脳卒中患者では,栄養摂取方法を考慮し,エネルギー消費量に見合った栄養管理をする必要があると考えられる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205578637568
  • NII論文ID
    130005418174
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.1139
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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