理学療法学生における対人信頼感の性別及び学年別比較

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抄録

<p>【目的】理学療法学生(以下,学生)への教育は科学的思考力に基づいた技能の向上と共に,豊かな人間性を備えさせる働きかけが必要とされている。特に,対人的信頼感は人格形成過程で発達的変化がみられることから,その評価を基に教育的配慮を加えることが重要といえる。今回,学生を対象として対人信頼感を測定する質問紙調査を実施し,性別及び学年別比較の結果から発達的変化を明らかにし,その発達を支援するための教育について検討した。</p><p></p><p>【方法】対象は質問紙調査の趣旨を了承した,4か所の理学療法士養成校(大学2校,専修学校2校)で学ぶ理学療法学生であり,回収し得た419名であった。学年の内訳は1年生121名,2年生109名,3年生110名及び4年生79名であった。質問紙調査(留め置き法)の時期は2015年9月と2016年6月であり,調査票は基本属性,信頼性尺度(天貝1997,19項目),自尊感情尺度(山本ら1982,10項目)などで構成されていたが,今回信頼性尺度について解析した。統計学検討はSPSS VER.16.0Jを使用し,各下位尺度得点の性別比較にはWelch's t testを学年別比較には多重比較検定(Tukey法)を行い,有意水準5%未満を差ありと判定した。</p><p></p><p>【結果】信頼性尺度の探索的因子分析の結果,先行研究と同様に「不信」,「自分への信頼」及び「他人への信頼」の3因子が抽出され,クロンバックα係数は各々.93,.90,.88であり,内的整合性が得られた。各下位尺度得点の性別比較では,「自分への信頼」と「他人への信頼」の2因子で生がみられなかったが,「不信」では男子学生が女子学生より有意な高値を認めた。また,各下位尺度得点の学年別比較では,「不信」で4年が他の3学年より有意な低値を示し,「自分への信頼」で4年が他の3学年より有意な高値を示し,「他人への信頼」で4年が2年より有意な高値を示したが,他の2学年とは差を認めなかった。一方,全回答者を良き助言(指導)者の有無別に二分し3因子毎で比較した。その結果,良き助言(指導)者がいる群がいない群より,「不信」で有意な低値を,「自分への信頼」及び「他人への信頼」の2因子で有意な高値を示した。</p><p></p><p>【考察】「自分への信頼」で4年が他の3学年より有意な高値を示したことから,1~3年生では学内教育や学生生活を通して自分の個性や信念を重視し自己同一性確立の過程にあると考えられる。他者への不信感を示す「不信」では,4年が他の3学年より有意な低値を示し,特に女子学生の低値が大きく係わっていた。このことは,臨床実習経験,対人関係スキルなどの社会技能の性差が係わっている。一方,良き助言(指導)者がいる学生では,いない学生より多次元的な対人信頼感が高まることが認められた。</p><p></p><p>【結論】学生の対人信頼感を発達させる上で教員の資質(教育者としての使命感,学生に対する教育的愛情など)と実践的指導力が重要な役割を持つことが確認された。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205578814208
  • NII論文ID
    130005609762
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.1675
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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