脳幹梗塞患者の急性期病院退院時の歩行獲得予測因子についての検討
説明
<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>急性期病院は入院早期から退院・転院調整が開始されるため,歩行獲得の有無は転帰先を決定する際の重要な要因の一つであり,早期から的確な歩行獲得の予後予測が求められている。脳幹梗塞では,神経症状の増悪や運動麻痺,感覚障害,運動失調など様々な症状が生じるため,予後予測が難しい。先行研究では脳卒中を対象とした歩行の予後予測の報告は散見されるが,脳幹梗塞のみの報告は少ない。そこで本研究の目的は,脳幹梗塞患者の発症早期からの評価で急性期病院退院時の歩行獲得予測因子を調査することとした。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は,H27年4月からH28年9月までに当院に入院した脳幹梗塞の患者12例である。内訳は,退院時歩行を獲得した(監視以上)7例を自立群,歩行に介助を要した5例を介助群とした。入院前から歩行に介助が必要であった症例と第5病日目の歩行が自立している症例は除外した。評価項目は,性別,年齢,入院前のmodified Rankin Scale,病型分類,病巣,麻痺側,神経症状の増悪の有無,入院時のNational lnstitute of Health stroke scale,第5病日目のJapan Coma Scale,Brunnstrom recovery stage(以下BRS),高次脳機能障害・運動失調・感覚障害・嚥下障害の有無,Trunk Control Test(以下TCT),座位機能,リハビリテーション開始時および初回車椅子乗車時のABMSIIとした。解析は,カイ二乗検定,Mann-WhitenyのU検定を行い有意水準は5%未満とした。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>両群間に有意差を認めたものは,年齢,病巣(延髄梗塞),高次脳機能障害の有無,TCT,座位機能であった。NIHSS,BRSでは有意差を認めなかった。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>本研究は,脳幹梗塞の急性期病院での歩行獲得予測因子を調査することを目的に行った。結果として,年齢,病巣(延髄梗塞),高次脳機能障害の有無,TCT,座位機能が有意差を認めた。しかし,運動麻痺の指標であるBRSや脳卒中の重症度を判定するスケールであるNIHSS,脳幹の症状の1つである運動失調では有意差を認めなかった。今回の研究では,運動麻痺が軽症の症例でも歩行獲得に至らなかったことから,BRSは脳幹梗塞の歩行獲得予測因子とはなりえない可能性が考えられる。入院時NIHSSについては,神経症状の増悪する例の多い脳幹梗塞では有意差を認めなかったと考える。また運動失調を認める場合でも体幹機能が良好であれば歩行獲得の可能があることが考えられる。本研究により,脳幹梗塞患者の急性期病院退院時の歩行の予後予測として,年齢,高次脳機能障害の有無,TCT,座位機能が因子として重要であることが示唆された。</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2016 (0), 1037-, 2017
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205578936704
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- NII論文ID
- 130005609046
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可