慢性期脳卒中患者における体幹・下肢筋の量的・質的変化の特徴

DOI
  • 門條 宏宣
    雅の里リハビリテーションセンター 神戸学院大学大学院総合リハビリテーション学研究科
  • 福元 喜啓
    神戸学院大学大学院総合リハビリテーション学部
  • 浅井 剛
    神戸学院大学大学院総合リハビリテーション学部
  • 久保 宏紀
    神戸学院大学大学院総合リハビリテーション学研究科
  • 糟谷 明彦
    神戸学院大学大学院総合リハビリテーション学研究科
  • 大島 賢典
    神戸学院大学大学院総合リハビリテーション学研究科
  • 吉川 義之
    雅の里リハビリ訪問看護ステーション
  • 春藤 久人
    神戸学院大学大学院総合リハビリテーション学部

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>脳卒中後,骨格筋量および筋収縮機能は低下することが報告されている。また,麻痺側下肢は筋の量的変化だけでなく,筋内脂肪量の増加といった質的変化を呈することが報告されている。しかし,体幹筋を含めて身体部位別に筋の質的変化の違いを検討した報告は見当たらない。近年,筋の質的な変化を表す指標として,非侵襲的な超音波診断装置による筋エコー輝度(筋輝度)を用いた評価が行われており,信頼性と妥当性が証明されている。本研究の目的は超音波法を用いて,脳卒中片麻痺患者の体幹筋および下肢筋の量的・質的変化の程度を麻痺側と非麻痺側間で調べることとした。また,筋の量的・質的変化に関連する因子についても検討した。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は,発症6ヶ月以上経過し,歩行が自立している脳卒中片麻痺患者12名(男性7名,女性5名,年齢65.8±16.1歳,発症からの期間53.3±56.6ヶ月)であった。麻痺下肢機能はFugl-Meyer Assessmentの下肢スコア(FMA)を用いて評価した。超音波画像診断装置(GEヘルスケア社製)のBモード法を用い,体幹筋として腹直筋,外腹斜筋,内腹斜筋と腹横筋,下肢筋として大腿直筋(RF),中間広筋(VI),外側広筋(VL),内側広筋(VM),前脛骨筋(TA),腓腹筋とヒラメ筋を撮像し,筋厚を計測した。また筋輝度は,画像解析ソフトImage J softwareの8-bit gray-scaleを用いて数値化した。さらに大腿四頭筋(QF)4筋の筋厚合計値と,筋輝度平均値を算出した。身体活動量の指標として外出頻度(1週間に何日程度外出しているか)を自己式アンケートを用いて調べた。統計学的解析として,麻痺側と非麻痺側間の筋厚と筋輝度の差を検討するために,対応のあるt検定を用いた。各筋厚および筋輝度と年齢,FMA,外出頻度の関連を検討するためにピアソンの積率相関分析を用いた。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>非麻痺側と比べ,麻痺側のQFとTAの筋厚は有意に薄く(p<.01),QFの筋輝度は有意に高かった(p<.05)。またQFを筋別に比較した場合,VLとVMの筋厚においてのみ,麻痺側のほうが有意に薄かった。外出頻度は麻痺側QF,RAの筋厚との間に,年齢は非麻痺側のQF筋厚と腓腹筋筋輝度との間に有意な相関を認めたが(p<.05),FMAはどの筋の筋厚・筋輝度とも相関を認めなかった。また,年齢,FMA,外出頻度のそれぞれの間にも相関はなかった。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>本研究の結果から,脳卒中片麻痺者の筋の量的・質的変化は,下肢の中でも筋によって程度が異なること,体幹筋には生じにくいことが示唆された。また麻痺側の下肢筋に生じる変化には身体活動量が,非麻痺側の下肢筋に生じる変化には年齢が関連する一方,麻痺の程度は筋量や筋の質への影響が小さい可能性が示唆された。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205579021440
  • NII論文ID
    130005609019
  • DOI
    10.14900/cjpt.2016.0982
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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