片麻痺を呈した開心術後症例に対するNU-STEPでの運動負荷試験・持久力トレーニングの導入

  • 高野 敬士
    埼玉医科大学総合医療センター リハビリテーション部
  • 森本 貴之
    埼玉医科大学総合医療センター リハビリテーション部
  • 武井 圭一
    埼玉医科大学総合医療センター リハビリテーション部
  • 山本 満
    埼玉医科大学総合医療センター リハビリテーション部

説明

【はじめに,目的】心臓リハビリテーションにおいて,有酸素運動を開始する際に自転車エルゴメーターやトレッドミルを用いた運動負荷試験を行い運動処方をする事が推奨されている。しかし,脳卒中後遺症により片麻痺を呈した症例は運動負荷試験の実施が難しいことが多い。今回,片麻痺患者において下肢の連続運動が比較的容易なNU-STEPを用いて運動負荷試験が実施可能であった症例を経験したため報告する。【方法】症例は69歳女性,診断名は大動脈弁閉鎖不全症,冠動脈瘤。術前心機能は,LVEF67%,LVDd/Ds45mm/29mmであった。既往歴の脳梗塞による左片麻痺(Br.stage上肢III・手指II・下肢IV)を認め,高次脳機能障害は認めなかった。ADLは自立,家事も一部実施し,週に2回はデイサービスに通っていた。2015年に大動脈弁置換術,冠動脈瘤切除術を施行され,4病日より理学療法を開始した。同日より離床を開始し8病日に病棟歩行が自立,12病日よりリハビリテーション室に移行した。下肢運動麻痺により自転車エルゴメーターのスムーズな駆動は難しく,トレッドミルも歩行速度上昇,傾斜に対応が難しかったため14病日よりNU-STEP(Senor社製TRS-4000)を用いた有酸素運動を開始した。NU-STEPは座式の四肢交互伸展器で下肢は粗大伸展運動を行う様式で5~800wattまで負荷調整が可能な機器である。21病日に一氏らのプロトコールに従い運動負荷試験を実施し運動処方を行った。プロトコールは毎分20Wずつ負荷が段階的に増加する設定であり,バイタルサインや心電図所見,自覚的疲労度等を確認しながら行った。なお,胸水貯留を認めていたため呼気ガス分析は行わなかった。【結果】運動負荷試験時,安静時BP 96/70mmHg,HR 98bpm,SpO2 95%であった(β遮断薬の内服なし)。Barthel Index:90点,6分間歩行試験:145m,筋力はMMT:4-5レベル,右膝伸展筋力(徒手筋力計):20.5kg(45.7%BW)であった。NU-STEPは下肢のみで駆動し,ほぼ左右対称にスムーズな駆動が可能であった。運動負荷試験は20W~60Wまで実施しバイタルサインの著しい変動や不整脈などの異常所見は認めなかった。40WにてBP112/84mmHg,HR104bpm,SpO2 95%,Borg scale(呼吸疲労/下肢疲労)で13/13で,60WにてBP106/72mmHg,HR104 bpm,SpO2 95%,Borg scale14/14であった。安静時心拍数が高値で心拍応答も不良であったためKarvonen法で設定した目標心拍数(120bpm;K=0.4)には至らなかったがBorg scaleにて嫌気性代謝閾値相当に到達したため,NU-STEPで40W×20分の有酸素トレーニングを週に2回の頻度で運動処方を行い外来での監視型リハビリテーションへ移行した。【結論】自転車エルゴメーターやトレッドミルを用いた運動負荷試験が実施困難な片麻痺を呈した心臓外科術後患者に対するNU-STEPを用いた運動負荷試験の有効性が示唆された。しかし今回は1症例での検討であるため,今後も症例を積み重ねて検討を続ける必要があると考えられた。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2015 (0), 1192-, 2016

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205579081600
  • NII論文ID
    130005418146
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.1192
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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