やや高度の認知症患者に対するトイレ動作獲得に向けた段階的な応用行動分析学的介入

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抄録

【目的】やや高度の認知症で要介護3であった超高齢患者を対象に,寝返り,起き上がりを含めた一連のポータブルトイレ(以下;PWC)動作自立を目標とした応用行動分析学に基づく介入効果を検討することを目的とした。【症例提示】右側慢性硬膜下血腫(左片麻痺),左恥骨骨折,入院前は要介護3レベル,重度認知症の90歳代女性。26病日での改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下;HDS-R)は9点,等尺性膝伸展筋力体重比(以下;膝伸展筋力)は麻痺側0.08kgf/kg(8%),非麻痺側0.08 kgf/kg(8%)であり,Stroke Impairment assessment set(以下;SIAS)は合計55/76点[上肢近位4,遠位3,下肢近位(股)5,(膝)2,下肢遠位(足)2,体幹(垂直性テスト)3,(腹筋力)1]であった。Functional Independence Measure(FIM)合計41点(運動FIM26点,認知FIM15点)であり,トイレ動作手順などに間違いが多く,常に注意点を口頭指示,身体的ガイドを必要とし,転倒する危険性が非常に高いレベルであった。基本動作は寝返り,起き上がりは言語指示,端座位保持は監視,起立は手すりに手を伸ばす際にタッピングと言語指示,移乗動作に関しては身体的ガイドが必要であった。19病日に理学療法を開始。PWC使用における一連の動作を2相で12の行動要素に分け,指示なし(監視)4点,言語指示3点,タッピング2点,身体的ガイド1点,全介助0点として得点を記録したところ,PWCへの移乗動作手順に間違いが多く,25病日時点でも4/48点であった。【介入方法】第1相は寝返り・起き上がり・移乗動作,第2相はPWC動作とした合計12の行動要素からなる一連の動作学習において時間遅延法を用いた介入を実施した。練習中の援助は口頭指示とモデリングからはじめ,5秒間で適切な動作が生じない場合には,タッピング,身体的ガイド,全介助の順に援助を変更した。適切な行動が生じた場合には介助者が笑顔で称賛,適切な行動が出現しない場合や不適切な行動が出現した場合にも注意や叱責をしないことを徹底した。第1相は2日連続で自立した場合に終了した。【経過と考察】第1相は介入9日目で満点に達し,第2相は介入17日には満点となり,失敗体験を減らして短期間に上達が実感できる学習が可能であった。その後,病室のPWCでは理学療法士の指示,称賛がない状態でもトイレ動作が可能となった。43病日(介入25病日)におけるSIASの運動感覚項目,HDS-R,FIM認知項目は初期と変化なかった。よって,今回の介入によるPWC動作手順の学習は有効であり,日常生活動作に般化したことが考えられた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205579139200
  • NII論文ID
    130005418133
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.1158
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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