虚弱高齢者における座位ステッピングと移動能力の関係性

DOI

抄録

【はじめに,目的】臨床においてステッピングテストは体力テストなどで用いられ,Timed Up and Go Test(以下,TUG)や機能的自立度評価法(以下,FIM)も頻繁に用いられる評価である。一般に,TUGは移乗・移動能力との関連があり,FIMは日常生活動作(以下,ADL)を反映していると言われている。また,立位ステッピングテストは5秒間の立位ステッピング値が17回を下回ると,転倒の危険性が約7倍に増加することが報告されている(池添ら 2009)。しかし,立位ステッピングテストは高齢者にとって難しく安全性の配慮が必要である。TUGの評価では場所の設定が必要であり,訪問リハビリテーションなど住宅内での評価は難しい。FIMの評価に関しても,あらかじめ評価内容の把握,専門的な知識が必要であるため医療従事者以外の使用は少ない。そこで,本研究の目的は,安全かつ簡便に行える座位ステッピングが一般的に実施しているTUGとFIMにどの程度反映しているかを明らかにすることとした。【方法】対象はデイサービスを利用している高齢者15名(男性3名,女性12名)とし,平均年齢83.7±8.3歳,平均身長149.2±7.5cm,平均体重54.0±9.6kgであった。座位ステッピングの測定には,ステッピング測定器(竹井機器工業株式会社製T.K.K.5301)を使用し,背もたれのない椅子に両上肢を体側で下垂させ,自然座位とし,スタートブザーが鳴り次第,全力で交互の足踏みを10秒間行わせた。なお,回数の測定は目視でも行った。TUGはPodsiadloの提唱に従い,理学療法室にて主に使用している歩行補助具を用い3mの往復歩行とし測定には,アップアンドゴー(竹井機器工業株式会社製T.K.K.5804)を用い,FIMは運動項目のみ評価した。測定前に練習を行い,各施行間には十分休憩をとり,測定は全て2回ずつ行い,座位ステッピングは最大値,TUGは 最速値を解析に用いた。座位ステッピングの回数とTUG,FIMのそれぞれの相関を検討した。相関検定はSpearmanの順位相関検定を用い,有意水準は5%未満とした。【結果】座位ステッピング回数は平均53.7±12.9回,TUGは平均20.9±12.5秒,FIMは平均5.53±1.13点となった。それぞれの相関は座位ステッピングとTUGでは-0.69(p<0.05),座位ステッピングとFIM(歩行)では0.54(p<0.05)とどちらも有意に相関がみられた。【結論】本研究の結果より,座位ステッピングはTUGや運動FIMと高い相関があり,TUGやFIMの測定と比較し,座位で行うため安全である。また,10秒と短時間で測定でき,虚弱高齢者であれば目視で回数が数えられるため,簡便に歩行能力やADL(特に移動)能力を示す指標になりうると考えた。今後,安全かつ簡便である座位ステッピングを用いることで移動能力を予測できる可能性があることが示唆された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205579313408
  • NII論文ID
    130005418499
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.1507
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ