重度脳性麻痺患者に対する上肢筋解離術後の満足度に影響を与える因子について

DOI
  • 津久井 洋平
    南多摩整形外科病院 リハビリテーション科
  • 松尾 篤
    南多摩整形外科病院 医局
  • 楠本 泰士
    南多摩整形外科病院 リハビリテーション科,東京工科大学 医療保健学部理学療法学科
  • 西野 展正
    南多摩整形外科病院 リハビリテーション科
  • 松尾 沙弥香
    南多摩整形外科病院 リハビリテーション科
  • 高木 健志
    南多摩整形外科病院 リハビリテーション科
  • 若林 千聖
    南多摩整形外科病院 リハビリテーション科
  • 干野 遥
    南多摩整形外科病院 リハビリテーション科

書誌事項

タイトル別名
  • ―アンケート調査による検討―

抄録

【はじめに,目的】脳性麻痺(以下,CP)患者に対して筋緊張や疼痛の軽減,変形や拘縮の改善などを目的に筋解離術(以下,OSSCS)が行われている。また上肢OSSCSは,下肢の手術に比べて件数こそ少ないが,日常生活動作(以下,ADL)や生活の質(以下,QOL)の向上には欠かすことのできない整形外科的手術である。高度な筋緊張や拘縮などにより運動機能に制限がある粗大運動能力分類システム(以下,GMFCS)レベルVのCP患者に対しても,上肢OSSCSは多く施行されてきた。しかし上肢OSSCS後の機能改善や介助量の軽減が満足度に繋がるかは不明である。今回,上肢OSSCS後の機能変化と満足度に関するアンケート調査を行い,満足度に影響を与える因子を明らかにすることを目的とした。【方法】アンケート送付対象は,当院にて肩,肘,前腕部のOSSCSを受けたGMFCSレベルVのCP患者44名とした。アンケート内容は術前の情報として手術時年齢,術前の上肢運動機能(Manual Ability Classification Systemを使用),術後の機能変化の情報として筋緊張,呼吸状態,食事や栄養状態,粗大運動,遊びや余暇活動,ADL,介助量における改善の有無を「はい」「いいえ」の二件法,および自由記述欄への記入にて調査した。さらに「はい」と回答した項目については,自由記述の内容を調査した。加えて手術の総合的な満足度については視覚的アナログスケール(以下,VAS)を用いて調査を行った。満足度と各アンケート項目との相関性はSpearmanの順位和相関係数を用いて算出し検討を行った。有意水準は5%とした。【結果】44名中12名より回答が得られ,回収率は27.3%であった。手術時の年齢は4~69歳,平均年齢15.5±53.5歳(平均±標準偏差)であった。術後改善が得られた人数は,筋緊張7名,粗大運動6名,介助量6名,ADL5名,遊びや余暇活動4名,食事や栄養状態3名,呼吸状態2名であった。満足度と各項目間の相関性については,ADL(rs=-0.83,p<0.01),遊びや余暇活動(rs=-0.63,p<0.05),食事や栄養状態(rs=-0.784,p<0.01)に有意な相関が得られた。また満足度と手術時年齢との間に有意な相関は得られなかった。【結論】食事や更衣など介助量に改善がみられたと回答したアンケートは50%に上ったが,満足度との相関は得られなかった。上肢機能の改善による介助量の軽減は,移乗動作などに比べて介助における負担が少なく,満足度に繋がりにくいと考える。一方,ADLや余暇活動の改善は,満足度との相関を得ている。これによりQOLの向上が満足度に影響を与えていることが示唆された。上肢OSSCS後の理学療法介入では,関節可動域練習などに加えてADLや余暇活動の動作練習を早期から取り入れることが重要である。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205579447552
  • NII論文ID
    130005417844
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.0899
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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