当院の地域包括ケア病棟における整形外科疾患患者のFIM分析

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  • ―退院時ADLに影響する要因―

抄録

【はじめに,目的】当院の地域包括ケア病棟は,平成26年11月に40床にて開設した。平成27年9月までの実績では,リハビリ対象者の77%が整形外科疾患であり,内73%が65歳以上の高齢者であった。その在宅復帰率は94%であったが,退院時の日常生活動作(activities of daily living;ADL)を機能的自立度評価法(functional independence measure;FIM)で評価すると,自立した者は39%であり,61%は要介助の状態であった。本研究の目的は,退院時ADL改善の為,当院の地域包括ケア病棟における整形外科疾患患者の退院時ADLに影響する要因を分析する事である。【方法】対象は,平成26年11月から平成27年9月に地域包括ケア病棟に入棟した65歳以上の全整形外科疾患患者54名(男性8名,女性46名,年齢79.3±7.0歳,入棟期間28.2±13.9日)である。後方視的に,診断名,認知機能評価(Mini-Mental State Examination;MMSE),入棟時・退院時FIMを抽出した。退院時FIM全項目自立した21名を「自立群」,要介助者33名を「介助群」とし,それらの入棟時・退院時FIMをMann-WhitneyのU検定で比較した。また,入院経路別に「緊急入院群」35名と「予定入院群」19名,MMSE結果から「認知機能低下群(23点以下)」20名と「認知機能正常群(24点以上)」34名に分類し,それらの退院時におけるADL自立の成否と,「緊急入院群」と「予定入院群」の認知機能低下の有無をFisherの直接確率法で比較した。更に,従属変数を「退院時ADL自立の成否」,独立変数を「入棟時FIM運動項目」「入棟時FIM認知項目」としてロジスティック回帰分析を行った(有意水準5%)。【結果】入棟時FIMは,運動項目は全て「介助群」が低く(p<0.01),認知項目は「社会的交流」以外「介助群」が低かった(p<0.01)。退院時FIMも同様の結果であった。「緊急入院群」は「予定入院群」に比べ,「認知機能低下群」は「認知機能正常群」に比べ,退院時要介助者が多かった(p<0.01)。「緊急入院群」は「予定入院群」に比べ,認知機能が低下していた(p<0.05)。「退院時ADL自立の成否」に影響する変数は,「入棟時FIM運動項目(偏回帰係数:0.186,オッズ比:1.204,p=0.002)」と「入棟時FIM認知項目(偏回帰係数:1.168,オッズ比:3.216,p=0.115)」が選択され,各変数は「入棟時FIM運動項目」のみ有意であり,判別的中率は87.0%であった。【結論】当院の地域包括ケア病棟における整形外科疾患患者の退院時ADLに影響する要因として,「入棟時FIM運動項目の点数」,「入院経路(緊急入院)」,「認知機能の低下」が挙げられた。退院時ADLを高めて介助量の軽減をはかり,退院後の在宅生活をより長く維持する為,地域包括ケア病棟入棟前の急性期からADLの視点で運動機能の改善に取り組む必要がある。また,緊急入院の場合,受傷背景や併存疾患,既往歴等の評価も重要であり,特に認知機能が低下している場合,認知機能に対するアプローチを併用し,運動機能の改善に取り組む必要性が示唆された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205579628800
  • NII論文ID
    130005418558
  • DOI
    10.14900/cjpt.2015.1577
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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