臨床実習における学生の自宅での課題実施時間,負担度および心理的ストレス反応との関連について
説明
【はじめに,目的】理学療法士養成校の臨床実習は症例を担当し評価治療していく形式が多く,問題解決のためにデイリーノート,担当症例に関する学習,指導者からの質問に対する学習,症例レポート作成,レジュメ作成などの課題が設定されている。これらを自宅で実施していくことで翌日の実習に好影響をもたらしているが,学習課題が滞りなく実施できない学生には多大な負担となり,ストレスを増加させ,結果的に実習継続に支障をきたすことは多々,見受けられる。臨床実習での課題に関する先行研究では,課題の量と負担についての報告はあるが,課題の種類による学習時間,負担度やその際のストレス反応について詳細な報告は極めて少ない。本研究の目的は実習経過中に学生に課せられた各種課題の実施時間,自覚負担度および心理的ストレスとの関連について明らかにし,教員の円滑な実習指導のための一助とすることとした。【方法】理学療法士2養成校4年生で8週間の臨床実習を遂行した93名を対象に実習中の課題に関するアンケートとSRS18(心理的ストレス反応測定尺度)によるストレス調査をした。アンケート内容はレポート作成,症例レジュメ作成,デイリーノート,実習指導者等による質問事項,担当症例の学習について自宅での1日ありの平均学習時間(分)および4段階評価(4点=強~1点=なし)による自覚的負担度でこれを得点化した。SRS-18は実習中の心理的状態を4段階評価(3点=肯定~0点=否定)し,3つのストレス反応(抑うつ・不安,不機嫌・怒り,無気力)と総合ストレスの得点を算出した。統計処理は課題実施時間,ストレス,自覚的負担度との関係をPeasonの積率相関分析にて検討した。統計ソフトはSPSS20を使用し,有意確率は5%未満とした。【結果】自宅での5つの課題実施時間は37.32分(質問の学習)~146.97分(レポート作成),自覚的負担度は1.97点(質問の学習)~3.00点(レポート作成)であった。総合ストレス反応は20.37±13.33点であった。各課題の実施時間と自覚的負担度は当該課題間で有意な正の相関がみられた(r=0.23~0.50)。自覚的負担度とストレス反応との関係では症例レポート作成が「抑うつ・不安」との間(r=0.21)に,他の課題は各ストレス反応および総合的ストレスとの間(r=0.24~0.46)に有意な正の相関がみられた。実施時間とストレス反応との間はレジュメ作成のみ「不機嫌・怒り」,「無気力」との間に有意な正の相関がみられた(r=0.21)。【結論】実習中の課題は中等度の負担が生じていた。それはストレス反応の程度と関係し,実習中のストレスには課題の負担度が関係していることが示唆された。また課題の負担度はその実施時間に関係しているものが多く,学習時間との関係があることが示唆された。しかし,学習時間はストレスとの関連が弱いため,課題の難易度など課題時間以外の要素が関係していることが考えられた。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2015 (0), 1711-, 2016
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205580134400
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- NII論文ID
- 130005418702
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可