かんらん岩捕獲岩中にトラップされた珪長質ガラスについて

書誌事項

タイトル別名
  • Trapped silicic glasses in peridotite xenoliths: a review

説明

かんらん岩捕獲岩の研究は、上部マントルで起こっている現象を考えるために非常に有効な手段である。そのかんらん岩捕獲岩中には、非常に珪長質なガラス(SiO2<70wt%)がしばしばトラップされており、世界中の様々な地域から報告がなされている。珪長質メルトの成因としては、様々なことが考えられているが、大きく分けると次の3つになる。(1)捕獲岩として上昇する間での部分溶融、(2)マントル中での部分溶融、(3)マントル中に浸入した外来メルト、である。これらの珪長質メルトの多くは、交代作用を引き起こしたか、もしくは交代作用の産物であると考えられている。 世界中の様々な地域からかんらん岩捕獲岩は報告されており、珪長質ガラスについての研究がなされている。しかし、多くは海洋島や大陸リフト帯から得られるものであり、沈み込み地域についての報告は少ない。それは、沈み込み地域から得られるかんらん岩捕獲岩自体が少ないことが原因として挙げられる。沈み込み地域では沈み込むスラブからSiに富むメルト/流体が放出され、マントルウェッジはそれらによって激しく汚染されていることが予想される。また、それらSiO2に富む物質による交代作用は、沈み込み地域のみで起こっていると考えられる。今回は、比較的よく研究がされている海洋島や大陸リフト帯のものに加え、沈み込み地域(Batan, Mexico, Cascade, Patagonia, Kamchatka, Papua New Guinea)から得られるかんらん岩捕獲岩中に存在している珪長質ガラスの主要元素組成について、レビューを行った。 海洋島や大陸リフト帯で得られるかんらん岩捕獲岩中の珪長質ガラスは、ノルムかんらん石やネフェリンを含むなど、アルカリ元素に富んでいる特徴があるが、沈み込み地域から得られるものはノルム石英を最大50%含むなど、かなりシリカに過飽和であることが大きな特徴である。また、海洋島やリフト帯の捕獲岩中のものでは、粒間充填的なガラスの方が鉱物中のガラス包有物よりシリカ飽和度が高い(Schiano et al., 1999)。それに対し、沈み込み地域で得られるものは粒間充填的に存在しているものよりもガラス包有物として存在しているものの方がシリカに過飽和である。このことは、その珪長質ガラスの起源と大きく関わっていると考えられる。海洋島やリフト帯ではシリカに不飽和なメルトがマントル中に浸入して、周囲に存在しているかんらん岩中の斜方輝石と反応した結果であると思われる。しかし、島弧ではかんらん岩中に浸入したメルトが元々珪長質で、それがマントル中を移動する間にスピネルなどにトラップされたものがガラス包有物であり、それが粒間に残って周囲のかんらん石などと反応したものが粒間充填的なガラスであると思われる。カムチャツカ弧のアバチャ火山から得られるかんらん岩捕獲岩中に見られる粒間充填的なガラスには、かんらん石を置換する二次的な斜方輝石を伴っていることとも一致している。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205590376064
  • NII論文ID
    130006960777
  • DOI
    10.14824/jampeg.2003.0.81.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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