大学生における社会人としての自覚・責任の育成

書誌事項

タイトル別名
  • The Cultivation Japanese University Students' Consciousness and Responsibilities as Members of Society

説明

<br>【目的】<br> 生活的・経済的・社会的に自立して生きることは、個人にとっても社会にとっても重要な課題である。家庭科教育では、「よりよい生活を目指し、主体的に判断して意思決定できる人間の形成」を目指している。この「主体的に判断して意思決定できる人間」として生きるためには、自分の人生は自分で築くという生活創りに対する積極的な意識と態度に加え、それらの行動に伴う意思決定の責任者は自分である、という自覚が重要であると考える。大学生活はそうした意味で生活すべてにおいての自立を目指し、社会に出るための準備をする最終段階であるといえるであろう。<br> 前報では社会に出ることを目前に控えた大学生が、特に企業における社会人としての自覚・責任についてどう考えているかの意識・実態調査を行い、その概要を捉えることができた。また、企業インタビューにおいて社会貢献の意思、変化に対する積極性、自分が周囲に与える影響といった内容を中心とする、社会人として求められる資質・能力が、大学生の考える社会人としての自覚・責任との関連においてどれほどの相違があるのかについても明らかとなった。その結果、社会人としての自覚・責任を考える上で重要な項目を抽出することができたが、大学生が思考する社会人としての意識をより詳細に理解すること、また意識と実態のギャップの原因を追究する必要性が示唆された。そこで、調査項目の中から特に重要と思われる項目についてインタビュー調査を行った結果、特に就職や働くということに視点を置いた回答が多く得られ、さらに働き方への迷いや、自分がしたいこととできること、自分の将来に対する理想と現実のギャップを感じ、葛藤を抱えていることが明らかとなった。<br> 以上より本研究の目的は、自己の進路を志向した望ましい段階的な自己分析法の構築のための諸要素を探究することである。<br> 【方法】<br>1)記述式調査 調査対象は国立大学教育学部2年生~4年生17名で、調査期間は2005年10月、12月、2006年1月の3回であった。調査内容は社会人としての自覚・責任の育成に必要な個人的自己実現、社会的自己実現に関する意識・実態について詳細な記述を求め、各人の意識の変容を分析・検討した。<br>2)アンケート調査 上記質的調査より得られた知見をもとに項目を設定し、アンケート調査を行った。調査対象は上記同大学学部生100名で、調査期間は2005年11月、2006年1月であった。<br>【結果】<br> 個人的自己実現において就職や進路に対する不安や迷いを大部分の学生が感じているが、目標を持つ学生は具体的に行動を起こしており、今後自分に必要な意識・行動も明確になっている。一方、目標がなく漠然とした不安を抱えている学生は、現在および将来必要な意識・行動が明確にされていない。こうした差は、社会的自己実現に対する意識の度合いに大きく影響していることが明らかとなった。すなわち、進路に対する目標がある学生は自分にとっての社会とは何か、社会においてどうありたいか、社会貢献についてどう考えるか等に自分なりの視点を持っているが、目標を持てない学生は社会と自分の関係を具体的に把握できていない。また、全体の傾向として自己の生活範囲内の環境に対しては積極性や貢献の意思が見られるが、環境の範囲が広がるにつれて否定的な意見や抽象的な意見が増えることが明らかとなった。これより、社会的自己実現の視点を育成するためには自己理解、周囲との関係理解を経て、社会人としての自覚・責任を持つというステップが必要である。

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キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205591997056
  • NII論文ID
    130006961019
  • DOI
    10.11549/jhee.49.0.7.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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