子どもの食生活実態が食生活の点検と献立作成に与える影響

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タイトル別名
  • The effects of meal reality on check of meal and menu planning

抄録

<br>【1 はじめに】<br>  学習指導要領には、家庭科では家庭との連携を積極的に図る必要があると明記されている。そこで、小学校家庭科の “1食分の食事を考える”一連の学習を通して、子ども達の日常の食生活実態が授業における食生活の点検や献立作成に与える影響について分析することを目的とした。<br> 【2 研究方法】<br> 1)調査時期<br>  対象とした授業が実施された2005年11月から2006年1月とした。<br> 2)調査対象<br>  青森県内の公立小学校6年生2組35名のうち、13時間構成の授業におおむね出席した男子15名女子17名の計32名を対象とした。授業者は対象校に勤務している教員歴約30年の教諭である。<br>  対象とした授業の学習計画等は指導教諭が考案し、著者らはそれには関わらなかった。<br> 3)調査方法<br>  著者らは8名のティーチング・アシスタント(以下、TAとする。なお、TAは本学2および3年次学生である。)とともに13時間の全ての授業に観察参加した。8名のTAは、8つのグループに各1名配置し、児童の授業時間内の全ての言動を詳細に観察した。TAと著者らは、授業後その結果についてまとめ、意見や評価の相違がある場合には著者らと話し合いを行い調整した。<br> 児童達が記述した全てのワークシート(以下、WS)等を分析資料としたが、本報では、事前調査の「1週間の食事調べ」、1時限目の「自分の食生活の問題点把握」、および12時限目の「調理計画」のWSを中心に分析した。<br> 【3 結果および考察】<br> 1)子どもの食生活実態とその評価<br>  子どもの1週間の食生活を4つ、つまり、◎は非常にバランスのよい食生活、○は欠食はないがややバランスに欠ける食生活、△は欠食はそれほど多くないが1食1品のような食生活、および×は欠食が多い食生活に分類した。その結果、◎は15名(46.9%)、○は8名(25.0%)、△は6名(18.8%)、×は3名(9.4%)となり、◎が最も多かった。<br> 2)子どもによる自分の食生活の点検とTAによる評価<br>  子どもに自分の1週間の食生活を点検させ、WSに「問題点を記述」させた。次に、その記述をTAがチェックし、子どもが問題点に気づいたかどうかを評価した。その結果、問題点に気づいた者23名(71.9%)、気づかなかった者9名(28.1%)となった。<br>  「問題点の記述」では、「ビタミンや野菜」に関するものが22名(68.8%)と最も多く、次いで「脂肪」に関するもの11名(34.4%)、「無機質」に関するもの8名(25.0%)、および「炭水化物」と「タンパク質」に関するものがそれぞれ4名(12.5%)の順となった。<br> 3)子どもの献立作成とTAによる評価<br>  子どもに食生活の点検から得られた問題点と改善点をもとに1食分の献立を作成させ、それをTAがチェックした。その結果、問題点を改善するように考えた者17名(53.1%)、ある程度考慮した者6名(18.8%)、考慮しなかった者9名(28.1%)となった。考慮しなかった者のうち4名は、作成した献立を家庭で実践することが障害となったことがわかった。<br> 4)子どもの食生活実態、食生活の点検、および献立作成との関連<br>  食生活実態と食生活の点検との関連をみた。その結果、食生活が比較的よい者(◎と○)はその75.0%が問題点に気づいたが、比較的悪い者(△と×)は55.6%と低くなった。食生活が比較的よい者の中には、バランスがよい食生活なのに「どこかに問題がある」と思い込んだために気づかなかった者がいた。また、悪い者の中には、自分と食事との関わりについて考える必要性が見いだせない者がいた。<br>  一方、食生活の点検と献立作成との関連についてみると、食生活の問題点に気づいた者でそれを献立作成に生かせた者は15名(65.2%)だったが、気づかなかった者では2名(22.2%)だった。<br>  これより、日常的にバランスのよい食生活をしている者は、食生活の問題点や改善点に気づき、問題点改善のための献立作成もできることがわかった。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205592008960
  • NII論文ID
    130006961040
  • DOI
    10.11549/jhee.49.0.53.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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