子どもの食生活の課題と「食育」「食教育」

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抄録

<目的>食生活をを取り巻く社会環境等が大きく変化し、個々人の食行動の多様化が進んでいる中で、子どもたちの食生活が、身体・心の両面からいろいろな問題を抱えていることが指摘されている。これらの問題を解決するために、食生活の認識やその改善のための教育、すなわち食教育の必要性が注目されている。しかし、食教育の目的や内容は、その対象となる子どもたちの状態や提起している問題点、それが生まれてくる背景によって異なってくると考えられる。食教育の今日的課題について考察するためには、子どもたちの状態や食の問題点がどのように変化してきたのかを明らかにすることが大切である。また、食教育についてはこれまで様々な場面で「食育」「食教育」「栄養教育」等という言葉が使われているが、その目的や内容は対象や対象のもつ問題点により違いが見られる。そこで、子どもたちの状況と食の問題点の変化を明らかにし、「食育」「食教育」「栄養教育」等の言葉の使われ方やその目的・内容について整理し分析する。<br><方法>1980年から2004年までの食教育についての各省庁のホームページからの資料や主な市販書籍等を収集し、子どもの食生活の問題点という視点で強調されていることがら、および「食育」「食教育」「栄養教育」等の言葉の使われ方やその目的・内容について整理し分析した<br><結果>1980年代は、清涼飲料水やスナック菓子などの過剰摂取や咀嚼の問題などに焦点が当てられていた。とくに子どもの肥満が原因となる小児ガン・動脈硬化・糖尿病などの病気が増えていることが指摘され、食教育の目的や内容も、身体の健康についてが中心となり、栄養過剰を防ぐために「なに」を「どれだけ」食べるかという栄養的な面が強調されていた。また子どもの一人食べと心の問題についても注目され始めた。そして1990年前後より、生活習慣病の予防に加えて、子どもの食欲の問題に焦点が当てられ、食卓のあり方と心の問題についての指摘が増えた。食教育の目的や内容も栄養的な面に加えて、人間関係能力を育てることを意識したものになってきた。しかし、ここではまだ家庭の問題として、家族の食卓での心のふれあいを中心にとらえられていることが多い。2000年前後より、栄養面や食卓のあり方に加え、子どもの食生活と問題行動との結びつきが「キレる」などの言葉が用いられ指摘されるようになってきた。食べることが、家庭だけではなく学校、地域等様々な環境との関わりの中で行う営みであるという視点が加わり、「なにを」「どれだけ」食べるかということとともに、「いつ」「どこで」「誰と」「どのように」食べるか、ということの大切さが注目されている。食教育の目的や内容も体の健康や心の育成に加えて、それを支援するための環境づくりまで含まれるようになってきている。それとともに「食育」「食教育」「栄養教育」「食に関する指導」「食を通じた子どもの健全育成」などの言葉が様々な場面で使われてきた。「食育」については2003年に閣議決定した「骨太の方針」第3弾にも盛り込まれ、文部科学省、厚生労働省、農林水産省でもそれぞれの取り組みがなされている。市販書籍等でもその目的や内容は対象や焦点とする食の問題点により違いが見られている。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205593748736
  • NII論文ID
    130006961212
  • DOI
    10.11549/jhee.47.0.9.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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