五感を使って味わい方を学ぶ授業の検討

書誌事項

タイトル別名
  • A study of class about tasting with five senses

説明

【目的】<BR>  近年、子どもを取り巻く食の環境は大きく変化している。戦後の高度経済成長から食生活の社会化が進み、家庭での食事の形態や内容が変化してきた。その中で中学生の食事は栄養の偏りとともに「肥満」の増加も問題となっている。中学生の実態を把握するために食生活と食習慣に関するアンケートを実施し因子分析を行ったところ、食生活に関する項目では第1因子として「刺激味志向性」が抽出された。食習慣に関する項目では第1因子として「ファースト志向性」が抽出され、指摘されている食生活の問題と重なっている実態がみられた。このような問題点や実態から、現行の中学校家庭科教育においては、おいしく味わう方法についても学ぶ必要があるのではないかと考えた。そこで本研究では、味覚教育の内容として「食べ物のおいしさを五感を使って味わい、人と共有すること」、また、「五感を生かしながらおいしさを作ること」についての指導方法の検討を目的とした。<BR> 【方法】<BR> 1.味覚教育の定義の検討<BR> 2.五感を使った体験のさせ方の検討<BR> 3.ジュース作りとすまし汁の調理によるおいしさの合成の検討<BR> 【結果と考察】<BR> 1.中学生の食生活の問題点や実態をふまえ、また、フランスで取り組まれている味覚教育の成果から本研究における味覚教育のとらえを「食べ物を五感を生かして味わうこと、味わい方を人と共有すること、また、味わい方を共有することによって食べ物についての理解をより深めること」とした。<BR> 2.マドレーヌとようかんを食材として用い、五感を使って味わった後、見た目・匂い・味・食感をことばで表現し、どちらがおいしいかの評価をした。見た目・匂い・味・食感のことばについてはさまざまな表現がみられたが、ことばの吟味を十分行わなかったため、どちらがおいしかは自分の嗜好で判断している傾向がみられた。そこで、食材を1個に限定し、時間をかけて味わわせた。その結果、ことばの種類や内容がひろがり、それらのことばを学級全体で確認することでりんごの要素を理解している様子が窺えた。また、五感の中でも味覚について学ぶ授業では五大基本味を個別に味わった実感をことばで表現させたことで、五大基本味の特徴について理解することにつながった。時間をかけて食材を味わった実感をことばで表現する方法は味わい方を共有化するために有効であることがわかった。<BR> 3.レモンジュース作りを通して、食べ物は見た目・匂い・味が組み合わさっておいしくなることを体験した後、だし汁や調味料、具材の見た目・匂い・味・食感を組み合わせてすまし汁を調理し、おいしさを作る体験を行った。このようなおいしさの分解と合成の体験により、おいしさは見た目・匂い・味が組み合わさって成り立っていることを理解していたが、見た目・匂い・味・食感を組み合わせておいしさを作っていくところまで至らなかった。しかし、すまし汁の見た目・匂い・味・食感を総合評価することでおいしさの要素について再確認できる機会となった。<BR> 【今後の課題】<BR>  上述の結果を基に、五感を使って味わい、ことばで表現された食べ物の要素を理解するための指導方法を今後も検討していきたい。また、おいしさを作る体験となる調理実習では見た目・匂い・味・食感・音に関して総合評価できる評価基準を検討していきたい。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205594380416
  • NII論文ID
    130006961413
  • DOI
    10.11549/jhee.50.0.73.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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