ノンフォーマル教育と家庭科教育との関連についての一考察

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タイトル別名
  • A Study on the Relationship of Home Economics Education and Nonformal Education

抄録

【背景と目的】 近年、わが国の学校教育現場においては、地域の特色を生かした教育を展開することを目的の1つに掲げ、学校と家庭を含む地域とが様々な形で連携(以下、「学地連携」と記す)が図られている。また、文部科学省からアクティブ・ラーニングの導入が本格化される方針が打ち出されており、今後は、地域と協働で様々な形態の教育活動が展開されることが期待されている。そして、家庭科は、これらのテーマについて先駆的に取り組んできた教科であり、今後のさらなる実践蓄積が期待されている。しかし、そもそも「教育」をどのように捉えて、何を達成するために学地連携を図り、アクティブ・ラーニングを推進するかといった点は必ずしも明確ではない。そこで本研究では、今後の家庭科教育で、学地連携やアクティブ・ラーニングを取り入れる際に、その基盤の一部となり得る概念整理を試みた。具体的には、抽象的な概念である「教育」について、その機能的側面に着目することで欧米の先行研究レビューを行った。次に、国内における関連分野の先行研究レビューを行い、今後の課題と家庭科教育との関連を整理し、考察した。<br>【方法】 文献は、インターネットによる論文サイト及び図書館蔵書検索サイトで検索・収集した。(検索終了2015年3月)<br>【結果と考察】 まず、教育を機能的側面から最初に分類したのはCoombs(1974)であった。彼は、通常みられるような構造的・制度的教育観とは異なり、学習者のニーズから出発してそれを支援する営みを「教育」と捉える「機能的な教育観」を提唱した。そして以下の3つを定義した。  (1) フォーマル教育:高度に制度化、段階的・階層的に構造化された初等教育から高等教育(大学)に及ぶような学校教育である。 (2) ノンフォーマル教育:フォーマル教育の枠組みの外において、子どもから大人までを対象に提供される、組織化された集団による教育である。 (3) インフォーマル教育:日常の経験と環境との接触から知識・スキル・態度・洞察を獲得していく、生涯にわたる教育である。 その後、主にEvans(1981)、Schugurensky(2000)、Rogers(2004)、Bennett(2012)などを引用することにより、現時点における教育の機能的分類に関する暫定的な概念図を作成した。<br>一方、わが国おいて、「公教育」「社会教育」「生涯学習」「家庭内教育」の関係性に着目したところ、教育の機能的分類という観点からの報告はわずかであり、欧米ほどの体系化がなされていないことが分かった。特に、機能的分類が困難であったのは、「社会教育」と「生涯学習」であった。そもそも「社会教育」は、わが国独自に発展を遂げた教育体系であり、法律上は「教育基本法」など複数箇所で定義は存在しているが、法律によって捉え方には若干の違いが見受けられた。また、「生涯学習」については、生涯学習審議会(1998)により定義されている。研究報告からも宇佐川ら(1962)、市川(1992)、渡邊(1992)らによって、両者の曖昧な分類や関係性が指摘されている。その後、鈴木(1997)によって、Coombs(1974)の3分類が「定型(フォーマル)教育」「不定型(ノンフォーマル)教育」「非定型(インフォーマル)教育」と和訳されるに至った。以上述べたように、通常地域がフィールドとなり展開される「社会教育」と「生涯学習」の解釈が、必ずしも明確ではない実情から、家庭科教育をはじめとする学校教育現場が地域と協働する際の、目的、達成目標、評価規準の設定を困難にしている可能性が伺えた。今後は、本研究で整理したような教育の機能的分類の視座から「ノンフォーマル(不定型)教育」の概念普及を図る必要があると考えられ、明確な「教育」についての理論的基盤に立った上での、教育実践蓄積が期待される。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205594668032
  • NII論文ID
    130005287084
  • DOI
    10.11549/jhee.59.0_84
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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