家庭科におけるキャリア教育の授業開発

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タイトル別名
  • Lesson Development for Career Education in Home Economics

抄録

【目的】日本の子どもたちは、将来就きたい仕事や自分の将来のために学習を行う意識が低く、職業意識・職業観が未熟で、進路意識・目的意識が希薄なまま進学する者の増加など「社会的・職業的自立」に向けて課題が見られると言われている。そのような実態を踏まえ、中教審答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(2011)において、キャリア教育のより一層の必要性が謳われ、「基礎的・汎用的能力」の育成等がはかられている。しかし、この答申では「人は、他者や社会との関わりの中で、職業人、家庭人、地域社会の一員等、様々な役割を担いながら生きている」「その関わり方の違いが『自分らしい生き方』となっていく」と述べられており、いわゆるライフキャリアの視点の重要性を述べられているが、これらの視点を取り入れたキャリア教育の実践については、十分に検討されていない。そこで本研究では、大学生に対する調査と小学校教員、小学生に対する調査を行い、それをもとにライフキャリアの視点を取り入れた家庭科におけるキャリア教育の授業開発を行なうことを目的とする。<br><br> 【方法】大学生・小学生・小学校教員対象アンケート調査、小学校教員への聞き取り調査を2014年10月から2015年12月に山梨県を中心に行い、それらを踏まえて、小学校家庭科におけるキャリア教育の授業開発を行った。<br><br> 【結果及び考察】大学生の実態調査からは、大学生の進路未決定傾向が明らかとなった。その中でも進路を決定している学生は「基礎的・汎用的能力」の一つであるキャリアプランニング能力を身に付けていることが明らかとなり、更に、高等学校での家庭科の授業に深く取り組むことの出来た学生は、このキャリアプランニング能力が高いことが明らかとなった。また、職業生活・家庭生活・地域生活の調和が取れたライフプランを設計している学生は、全ての「基礎的・汎用的能力」が高い傾向が見られた。<br> 小学生の実態調査からは、将来の夢の有無は、自分への自信や、自己理解、キャリアプランニング能力の高さと関連が深いことが明らかとなった。また、生活習慣等が確立している児童は、4つの「基礎的・汎用的能力」全てが高いことがわかった。<br> さらに、小学校教員の実態・認識調査からは、キャリア教育の重要性や家庭科での必要性は感じているものの実践には結びつかない現状が挙げられた。一方、学校全体でキャリア教育に取り組むことのできている教員は、キャリア教育に対する意識や、家庭科におけるキャリア教育の実践度が高い結果となっていた。<br> また、家庭科におけるキャリア教育を実践している教員への聞き取り調査からは、小学校家庭科におけるキャリア教育の特徴として、家族の一員として役割を果たすこと、家族や地域との関わり、課題意識を持たせること、家庭科の学習と将来の繋がり等が明らかとなった。また、家庭との連携をしながら、児童が学習したことをもとに、継続的に実践を行えるように、指導の工夫がなされていることがわかった。<br><br> 以上より、小学校家庭科におけるキャリア教育を行う上で6つのキーワード(A:家族の一員としての自覚、B:家族・地域との関わり、C:生活の中の課題、D:協働、E:継続的実践、F:「できる自分」への成長の展望)を導き出した。さらに、このキーワードから家庭科の特徴を生かした能力として、家族と関わる力、地域と関わる力、生活の中の課題を発見する力、評価・改善し、生活に生かす工夫をする力、今の自分から「できる自分」になるために必要なことを考える力他の11項目を設定した。<br> これらをもとに、小学校を中心とした家庭科におけるキャリア教育の授業・教材を開発した。1つの単元を通して、家庭科の特徴を生かした「基礎的・汎用的能力」を育成できるよう構成する、授業後の家庭での実践を重視する、授業後に能力が身についたか児童と教師がチェックできるようにチェック欄を設ける等、工夫した。開発した教材は小冊子としてまとめ、これを使用して授業実践・検討を行うことを今後の課題とする。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205594686720
  • NII論文ID
    130005287051
  • DOI
    10.11549/jhee.59.0_90
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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