家庭科ふれ合い体験学習過程の可視化・共有化の試み

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • An Approach to Visualizing and Sharing the Learning Process of Experience in Early Childhood Education and Care
  • Based on the survey in Reggio Emilia Approach
  • レッジョ・エミリア・アプローチを手かがりとして

説明

問題と目的<br>これまで、家庭科でのふれ合い体験によって、生徒の自己効力感が上昇することや(伊藤、2003)、職場体験と異なり幼児の発達についての知識が上昇すること(岡野・伊藤・倉持ら,2011)が、示唆されてきた。しかし、ふれ合い体験の中身やふれ合い体験前後の授業をブラックボックスの中に入れて体験の効果を評価しており、生徒の学びのプロセスが明らかではなかった。学びのプロセスが明らかになることにより、目の前の生徒がもつ課題によって、事前事後の授業の組み方や、ふれ合い体験の中身を柔軟に変えることも可能になり、ふれ合い体験が生徒達の現在の生活や将来の生活に、より役立つものとなるだろう。この学びのプロセスを明らかにするためには、生徒の授業からの学びを質的に捉えていくことが求められる。しかし、学びを質的に見とって評価している研究蓄積は少ない。<br>イタリアのレッジョ・エミリア市の教育施設では、実践家と教育学専門家が子ども達の学びを質的に見取り、子どもにあわせたカリキュラムを開発していることで有名である(秋田 2003)。例えば、ドキュメンテーションという子ども達の意見、討論、子ども達の活動を撮った写真、多くの媒体物を用いた子ども達の思考と学びの表現の記録は、注意深く整頓され、文書化されている。これは、子ども達の最終的な作品だけを評価するのではなく、その作品を生み出すまでの過程を大切にしようとする考え方に基づいている。ドキュメンテーションにより子ども達の学びの過程を可視化し、子どもの保育に携わる複数の保育者や保護者がそれを共有できるようになっている。このようなレッジョ・エミリア市の教育施設での子ども達の学びの見取りから、本研究の目的に接近するための示唆が得られると考えられる。本研究では、レッジョ・エミリア・アプローチを実施している教育施設の訪問とヒアリング調査を通して、学びを質的に評価するために方策について検討したい。<br>研究方法<br>イタリアレッジョエミリア市とボローニャ市でレッジョ・エミリア・アプローチを実践している幼稚園を訪問し、具体的な取り組みについてヒアリングと視察を行う。また、市の職員からも、ヒアリング調査を実施する。<br>結果と考察<br>3月下旬に訪問するため、発表要旨入稿時には視察を終えていない。現段階では、レッジョ・エミリア・アプローチに関する文献から示唆される点についてまとめる。学会発表時には視察結果も含めて発表する。<br>・専門家と実践者の共同による学びの見取りについて:<br>レッジョ式の教育現場では「アトリエスタ」と呼ばれる芸術の専門家と、「ペタゴジスタ」と呼ばれる教育学の専門家が配置されて、教室毎に二人の保育者によるティーム・ティーチングが実施されてきた。アトリエスタは大学で芸術を専攻した教師であり、ペダゴジスタは、大学で教育学を専攻した教師である。イタリアの保育者は多くは短大レベルの教育で養成されていて、ペダゴジスタとアトリエスタは保育者の教師としての専門性を高める重要な基礎となっている。このような様々な背景をもつ専門家が子どもの学びの過程を読み取り共同して学びの場を作っていく。家庭科のふれ合い体験では、家庭科教員一人で生徒の体験を見取らなくてはならない。その際に、どのような観点から生徒達の体験を捉えていけばよいのか、その示唆が得られると思われる。<br>・ドキュメンテーション(記録)について:<br>先述したように、生徒の学びを可視化し、他者と共有するための重要なツールと考えられる。ふれ合い体験では、事前事後の授業も含め、幼児を理解し幼児との関わり方を学ぶことを目的とする。事前事後も含めた連続した授業の中で、どのような資料をドキュメンテーション化していけば、生徒の学びの過程をより理解することができるのか、レッジョ・エミリア・アプローチから示唆が得られると期待できる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205594715776
  • NII論文ID
    130005021646
  • DOI
    10.11549/jhee.56.0.88.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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