食育推進計画による伝統野菜普及の視点でとらえた地域の家庭科教育

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  • Home economics education in the region captured from the point of view of traditional vegetable spread by food education promotion plan

抄録

【目的】  新潟県長岡市では平成21年長岡市食育推進計画が策定され、地域の自然と食文化の継承を軸として、その担い手の育成を重視する中で、長岡市の伝統野菜である「長岡野菜」の普及に取り組んでいる。事業の一つとして、「長岡野菜(13種類)」を使用している「長岡ぴったり3・1・2弁当箱法(以下「長岡弁当箱法」)コンテスト」や「食に関する授業」が取り上げられ、小・中・高校生段階の目指す「ありたい姿」として、小学生は「食を学ぼう」、中学生は「食を身につけよう」、高校生は「食を活かそう」としている。本研究は長岡市食育推進計画による伝統野菜普及の視点と関連する高等学校・中学校の家庭科授業実践の様子や学校内外の活動を明らかにし、「地域に根ざした家庭科」のあり方を見出すことを目的として行った。<br>【方法】  長岡市内の高等学校(11校) 、中学校(26校)に勤務する家庭科教諭を対象とし、質問紙調査(郵送法)にて授業実践の調査を行った(平成24年6月、25年2月実施)。高校は4校(36.4%)、中学校は12校(46.2%)から回答を得た。質問項目は、「長岡野菜とその他の特産物」を授業(講義・調理実習)で扱っているか、「長岡弁当箱法」を授業(講義・調理実習)で扱っているか、高等学校は、食生活と環境に関する項目について家庭科の教育内容として重要と思う程度を質問に加えた。高等学校の回答校4校にはヒアリング調査を実施した。質問項目は、「長岡野菜とその他の特産物」について、生徒の知識や嗜好、授業で扱うことについての考え、高校生に伝えていきたい郷土料理とその理由、「長岡弁当箱法」については、調理実習における扱い、「長岡弁当箱法」についての考えなどである。「長岡野菜」を授業で扱っている高校については、授業での生徒の反応や特徴ある教育内容について調査した。  <br>【結果及び考察】  高等学校回答校4校のうち3校が専門学科であり、勤務年数は16~22年である。1校は「長岡野菜」を学校家庭クラブのテーマにも取り上げ、栽培も行なったり、レシピコンテストに応募したりしている。全体として13種の「長岡野菜」の全てを半数以上の学校で扱っており、講義または調理実習で扱うのは、「かぐらなんばん」「里芋」「糸うり」「ずいき」「体菜」が多い。講義・調理実習ともに扱っているのは「里芋」で「のっぺ」や「含め煮」の実習を行なっており、「のっぺ」は「高校生に伝えていきたい郷土料理」である。生徒が「良く知っていて、好きな長岡野菜」には「長岡巾着なす」「かぐらなんばん」「ずいき」が上げられている。「長岡野菜」を普及させる授業として、家庭基礎で「長岡野菜」のアップリケを作成し、ポケットに使用したエプロン製作したり、ウォールポケットにしたり、布の絵本にして施設に寄贈している学校もあり、高校における「長岡野菜」に関わる授業は、家庭科の食領域に留まらないところ、生徒自ら発信できる場があるところに特徴が見られた。一方、中学校は勤務年数の平均は16年であり、25年以上が4人である。授業の説明で13種のうち9種を半数以上の学校で扱っている。調理実習では「里芋」が7校で高校同様「のっぺ」を作っている。「だるまれんこん」も3校である。中学校では「糸うり」「おもいのほか」「だるまれんこん」などは給食の食材として扱われていたり、「肴豆」は技術で栽培していたりと様々な取り扱いがある。栄養士や栄養教諭との連携、外部講師を招く授業などの実践もあり、「野菜に関心を持たせる」という一面からも「長岡野菜」を授業で扱うことについて肯定的な家庭科教諭が多い。授業時数の少ない中学校家庭科の中にも工夫して「長岡野菜」を取り入れている。「長岡食育推進計画」による長岡伝統野菜の普及の視点と同じく、中学校は「自らが身につける」、高等学校は[活かそうとする」で地域に根ざした家庭科教育が実践されており、「食育推進計画」による地域の資源の活用は家庭科教育の充実に繋がることが示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205594717952
  • NII論文ID
    130005021651
  • DOI
    10.11549/jhee.56.0.92.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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