ESDを視点とした家庭科教育内容開発研究

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書誌事項

タイトル別名
  • Development of the home economics curriculum based on the ESD
  • Focus on the reflection of clothing construction and practice in the clothes life study
  • 衣生活学習における被服構成と実習の問い直しを中心として

抄録

目的平成20年に公刊された中教審答申では、世界や我が国が持続可能な発展を遂げるための課題として「環境問題」を位置づけ、学校教育にESDの視点を含む学習を求めた。それを受けて改訂された平成20・21年版家庭科指導要領では、資源や環境に配慮したライフスタイルの確立を目指し、従来、「食物」と共に常に単独で領域が設定されていた「被服」を、相互に関連しながら人間を取り巻く環境をつくっている「住居」と合わせて小・中学校の内容を編成した。しかし、これは学的系統を越えた問題のある編成となっている。本共同研究では、新指導要領で示された衣生活学習の問題点を教師レベルで解決するため、ESDを視点とする衣生活学習の教育内容の開発を目的とした。<br>方法平成20・21年版家庭科学習指導要領・教科書、米国中等学校家庭科教科書“Teen Guide”(1990)、櫛田真澄『男女共学の中学校家庭科』、家政教育社、1984を資料とする事実分析・事実づくり研究<br>結果:<br>1.新指導要領に示された衣生活学習の問題点:衣生活学習のねらい・原理を、家庭科のそれから求めると、「被服学を基盤とする法則・理論の系統的学習」を原理として、ねらいである「衣生活に関する科学的認識の形成」を達成すると共に、教育の目的である人格の形成と民主主義社会で生きるための資質を獲得させる学習として家庭科に位置づけられなければならない。<br> 本共同研究では、現代の衣生活を反映し、ねらい・原理を具現化した衣生活学習として、米国家庭科“Teen Guide”(以下、T.G.と称す)の衣生活学習の教育内容の構造と中心的考えを枠組みとして、新指導要領に示された衣生活学習を分析した。その結果、ねらいでは衣服のみの学習が目指され、人間形成が欠落していること、内容では、質的・量的な問題と、目的と方法原理を結びつける「被服計画」及び職業教育に関する内容が欠落していることが明らかとなった。この内容の問題を教師レベルで解決するため、櫛田真澄氏の男女共学家庭科の実践(昭和54年)を事例として内容開発を試みた。<br>2.櫛田氏の「古ワイシャツの研究」の衣生活学習としての評価:櫛田氏は、当時、性別によるコース指定が明瞭にされた中学校技術・家庭に異議を唱え、「人間教育・国民的一般教育」「男女差のない家庭科全ての領域の学習」の二つの観点から自主編成を行った。その家庭科カリキュラムは、1年次は被服、2年次は食物、3年次は保育・住居で編成され、全面共学で実施された。本共同研究では、1年次の「古ワイシャツの研究」に焦点を当てた。この被服学習は、家庭生活の中で衣服を製作することがなくなった衣生活を背景として、既製服をいかに選んで着るかを考えさせる学習を通して、科学的合理的に衣生活が営めるように基礎的な知識と簡単な裁縫技術を身に付けさせる実践として開発されたものである。櫛田氏の実践記録を分析した結果、「古ワイシャツの研究」は、衣服のみに焦点を当てた学習になってはいたが、当時の指導要領に示された衣生活学習のほぼ全ての内容とT.G.で明らかにした職業教育以外の内容を網羅できる学習であると評価できた。<br>3.ESDを視点とした衣生活学習に関する教育内容の開発:現代の衣生活は、櫛田氏が実践を行った時代と比べると、家庭での衣服製作は必要なくなっているが、ESDの視点から考えると、廃棄の段階までを考えた被服計画とリフォームの視点からの被服構成に関する知識・技術が必要とされていると捉えられた。本共同研究では、ESDの視点から、櫛田氏の「古ワイシャツの研究」の内容を組み替え、不足する内容を付加することで、17単位時間の中・高等学校の衣生活学習を構想し、科学的概念の獲得を目的とする「教授書」の形式で「被服構成:古ワイシャツのリフォームによる幼児のスモック製作を事例として」を開発した。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205594797056
  • NII論文ID
    130005021621
  • DOI
    10.11549/jhee.56.0.65.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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