大学生を対象とした生活設計教育における家計簿の活用および効果

書誌事項

タイトル別名
  • The Effect of Household account book in Life Planning Education of University Students
  • ―大学生の家計簿記録と自己評価シートを手掛に-

説明

<目的>生活設計は、家計管理の目標によって生涯を見通した長期生活設計と短期生活設計に分けられる。短期の生活設計とは、家族員あるいは個人の目標を達成するためにわりと短い期間、多くの場合、1年を単位として、過去と現在の支出状態を把握すること、次の年の平均所得を予測し、短期的な目標の優先順位によって家計の財務状況を把握すること、それにあった予算を立てて予算とおりに実行し、家計の経済状況を向上・改善させるものである(Yoonほか2005)。短期生活設計において、毎日あるいは毎月の収入・支出を記帳し、家族あるいは個人の経済生活の動きをはっきりと示してくれる家計簿は、欠かすことのできない大切な用具といえる(坂本1984)。家計簿をつけるということは、家計管理における計画性を表す指標でもある。本研究では、大学生の家計簿記録と自己評価シートを分析し、家計簿記帳前後の変化を捉えた上で、家計簿の活用および効果について検討することを目的とする。<方法>本研究では、 H大学家政科教育の3年生専門科目の受講生が記録した、3週間~1カ月間の家計簿記録と自己評価シートを用いて、家計簿記録の効果について分析を行う。分析に用いる家計簿記録および自己評価シートは11枚である。<結果>結果を以下にまとめた。第1に、経済生活における計画性に関係する評価がみられた。具体的な記述は「アルバイトを始めたことで、収入が増えるといつもより少し多く支出をしても余裕があってしまい、支出がいつもより増えていまっている。アルバイト代は来月の旅行費にするという明確な使用目的があっても、少しくらいならと考えて使ってしまうところがよくないと感じた」「食費や預貯金分も初めから計画した分を差し引いておき残りを自由に使うというふうにするとよいと考えた」「毎月アルバイト代だけの収入に収めることができず、翌月分や貯金から使ったり、クレジットで買い物をしたりとして、支出が大きくなてしまっている」第2に、現在の生活だけでなく、未来を見通したうえでの経済生活の必要性に気付いた記述も確認できた。例えば、「今は旅行費が減るだけということだが、将来に置き換えると貯蓄ができないということにつながる」「月始の支出が、前の月の超過分を補うための返済から始まると、その分当月使うことのできる金額が減り、また翌月分に手をつけてしまうという負のサイクルが起こってしまうため、当月はその月の収入だけでおさめるように工夫しなければならない課題が見えた」「今は消費支出だけだが、社会保険などの非消費支出や実支出以外の支出も入ってくる。実支出以外の支出には注意をしなければならない」第3に、家計簿がお金の収支を記録するだけではなく、生活記録として活用され、生活改善につながる記述もあった。具体的に、「私は自炊をしようとスーパーに向かうと、いつお弁当やお惣菜に目がいってしまい、余計な買い物をしてしまう」「お金を使いすぎたと頭の中で思うだけではなくて、しっかりと記録していくことも大切だと思った」第4に、経済生活の改善を図る前に、自分の経済生活の現状を把握する資料として活用している例もみられた。「いつか旅行に行きたいので貯金をしたいのだが、毎月使いきってしまっているので今のところ貯金ができていない。そこで、2週間の記録をもとになにか貯金できない理由を見つけたいと思った」「大学1年生から今まで自分で家計簿をつけているが、今までつけてきたものと比べて、今回の6月の出費は大体平均の値である」以上で大学生の家計簿記録と自己評価シートを手掛に 大学生を対象とした生活設計教育における家計簿の活用および効果について考察した。今回、家計簿記録と評価シートを記録したのは大学3年生であって、家庭経済の授業が行われた後でもあり、お金の収支だけでなく、さまざまな側面での自己評価が行われたとみられる。今後は、異なる学年、異なる専門学科の学生等を含め、大学生の生活設計教育に応用できる家計簿活用方法を模索することが課題である。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205594818816
  • NII論文ID
    130005021627
  • DOI
    10.11549/jhee.56.0.70.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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