小学校家庭科における弁当作りに関する教材開発及び授業実践

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タイトル別名
  • Development of teaching material for making bento and educational practice in elementary school home economics

抄録

1.研究目的 <br> 現代は、調理をしなくても手軽に食物を手に入れられる社会環境があり、子ども達の家庭での調理実践は非常に少ない。筆者が小学6年生を対象に行った調査では、41.5%の児童が、夏休み中に1度も包丁を使っていない1)という実態があった。 <br> 本研究では、弁当作りを題材に取り上げた。弁当は、中学生になると必要になる場合が多く、調理や弁当箱への詰め方に、日常の食事作りとは違った工夫や配慮が必要であるが、主食・主菜・副菜を揃える点では日常の食事作りに繋がるため、題材として扱った。児童が、必要な調理技能を習得するためには、家庭での調理実践が欠かせない。児童の調理実践を促すため、授業で基礎的な知識・技能を学習できるような調理実習の内容と、指導の工夫が求められる。谷口は、「弁当づくりは、栄養、味の調和、彩り等を考慮する要素を包含しており食生活の自立に有意義な題材」2)と指摘している。小学校での弁当作りに関する先行実践は、坂内3)や飯島4)によるものがある。しかし、食分野での授業時数は限度があるため、本研究では3時間で、既習の調理技能の定着を図り、食事作りの学びを深めることを意図した。また、自分に必要な食事量を調節できる弁当の良さを活かし、児童が自分の弁当箱を持参し、弁当箱にあった盛り付けの仕方を考えさせた。本研究のために開発したレシピ教材とともに、題材・指導方法の有用性について検討する。<br>2.研究方法 <br> 高知県内の国立F小学校6年生1クラス36名を対象に、家庭科において、2011年10月26日に1時間、11月9日に2時間、計3時間の授業実践を行った。1時間目に弁当作りのコツを学習し、栄養バランスを考えた弁当作りとして、設定しておいた選択肢から、班ごとにメニューを決めさせた。次に、計2時間で弁当作りの調理を行った。ワークシートと事後の質問紙調査、VTRによる授業記録も分析対象とした。<br>3.研究結果および考察 <br> 事後の質問紙調査の結果、「メニューを考えるのがとても楽しい」73%、「弁当の調理がとても楽しい」82%と、大変意欲的に取り組んでいた。また、弁当作りのコツとして学習した、「冷ましてから詰める」や「味が混ざらないようにする」を意識して調理をしており、弁当作りならではの工夫も学習できたと考えられる。班で料理を完成させて、自分の弁当箱に詰める活動は、責任感をもって取り組むことができ、また班の友達と協力しながら、楽しんで調理ができていた。「家でも弁当を作りたいか」という問いに、「とてもそう思う」が52%であり、73%の児童が肯定的な回答をしていた。弁当作りの楽しさや良さ、自分の調理技能を評価し、「作りたい」という意欲に繋がったと考えられる。<br> 本時で用いたレシピ教材は、特に調理時間確保の面で、F小の先生から良い評価をいただいた。本教材を用いることで、班ごとに違ったメニューで調理を行うことができる。また、詳しく調理手順を示すことで、説明を最低限の時間にとどめ、調理時間を十分に確保でき、手順を正確に伝えられる。これらは、本研究以外の調理実習でも活かすことができる。個別に配布できれば、家庭での実践にも繋がると思われる。<br> 今後、多くの児童に家庭での実践を促すため、より手軽なメニューの提案、レシピ教材の改善と有効な活用法の検討を課題としたい。<br>4.引用・参考文献<br>1)小島千明・菊地るみ子「小学6年生の食生活に関する実態と課題」『高知大学教育学部研究報告』第72号 2012年pp.11-16<br>2)谷口明子他「小学校家庭科における実践的な態度を育てる授業「お弁当づくり」の開発」『奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要』(11)2002年pp.201-205<br>3)坂内都子「「お弁当を作ろう」—健康な心と体を作る食育を目指して」『家教連家庭科研究』No.289 2010年pp.10-13<br>4)飯島悠子「まかせてね!きょうの食事—栄養バランスのとれたお弁当を考える—」『家教連家庭科研究』No.276 2008年pp.32-35

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205595060352
  • NII論文ID
    130005021517
  • DOI
    10.11549/jhee.55.0.65.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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