布の構造と空気から考える小学校家庭科衣生活内容の構築
書誌事項
- タイトル別名
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- Constructive proposal on teaching materials for textiles and clothing in Elementary school: focus on properties of air and fabric construction
説明
1.目的<br> これまでに、発表者らは小学校家庭科衣生活内容における着方学習について、布の構造と空気を軸とした授業提案をおこなってきた。すなわち、布の織り目や編み目に存在する空気の多少と気温や季節に応じた着方に取り上げられる布の性質(保温性・通気性・吸水性)とを関連させたものであり、被服衛生学が中心であった。 衣生活学習では、被服製作に多くの時間が割かれ、人体を覆うのに最も適している布としての観点が不十分である。また、「手洗い」を通して基本的な洗濯作業を学ぶという位置づけで、「洗濯ができる」を扱っている。しかし、日常生活では洗濯機による洗濯が主流であることや、洗剤の働きなどは中学校で学習することから、小学校で学ぶ内容「作業の必要性が分かり、適切な方法を考えて洗濯することができるようにする」には無理がある。本研究では、被服衛生学を中心とした着方学習にとどまらず、衣生活内容全般(被服製作を除く)について、布を扱う被服材料学及び手入れや管理を扱う被服管理学の視点を加えた学習内容を構築することを目的とする。<br><br> 2.方法<br> 新学習指導要領解説及び2011年度から使用されている2社の小学校家庭科教科書における衣生活内容を省察し、被服材料学、被服管理学、被服衛生学の各専門分野注1)から、小学校家庭科における衣生活の専門内容を精査した。<br><br> 3.結果及び考察<br>(1)空気に着目した着方学習の現状<br> 教科書の記述は、「内側にはセーターのように、空気をたくさんふくむ衣服を着る。」(T社)及び「重ね着をすると空気の層が増えるので、よりあたたかさを保つことができる。」(K社)、「空気の通しやすさ」(T、K社)である。着方学習(あたたかい着方・すずしい着方)は、「動かない空気(熱の不良導体)」、「動く空気(対流)」で一貫して説明することが重要であるにもかかわらず、空気は、保温性・重ね着・通気性の説明に用いられているだけである。衣服の形(被覆面積及び開口部)についても、身体にまとう空気の多少から説明が可能であることから、空気の性質という原理を学習しなければ、日常生活における活用・応用が難しいと考えられる。 さらに、あたたかい着方の学習は、すずしい着方より先に取り上げることが必要であると考える。すなわち、季節や気温に応じた着方(着心地)には、布の熱・水分の移動特性が関連する。あたたかい着方は、熱の移動特性によってほぼ説明できるが、すずしい着方では、熱・水分双方の移動特性が関連するためである。外気温が体温より高い場合や日差しが強い場合は、衣服(空気層)によって外部の熱を遮断することが有効であるが、高温多湿の場合、衣服が発汗蒸発を妨げるので、水分移動特性もふまえる必要がある。現行2社の教科書では、取り上げる順番が異なっており、学習の順序性が重要視されていないと思われる。空気の性質という原理をふまえ、あたたかい着方の学習を先に扱うことが必要である。また、学習指導要領解説では、「・・・住まい方も着方も空気の流れの調整が相互に関連していることに気付かせる学習展開も考えられる。」という記述がある。布の構造と空気を軸とした一連の衣生活学習は、学習を容易にする。<br>(2)布の構造と性質の位置づけ<br> 学習指導要領解説及び教科書では、布の構造と性質は、小物づくりで取り上げられている。しかし、布を用いた製作として布の性質を知るのではなく、肌触りや丈夫さを衣服の性質としてとらえ、保温性や伸縮性、吸水性などの着心地に関わる性質と関連させて理解するために、布の構造から一連の内容を学習することは適切であると考える。「布を知る」及び「洗う」の詳細は別途発表予定である。<br><br>注1)本研究は、日本教育大学協会全国家庭科部門近畿地区会の研究助成金による。
収録刊行物
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- 日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
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日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 55 (0), 9-, 2012
日本家庭科教育学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205595104640
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- NII論文ID
- 130005021544
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可