高齢者との交流に関する一考察

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Considerations for Interaction with the Elderly
  • - Educational Aromatherapy Approach in Home Economics -
  • 家庭科におけるアロマセラピーを取り入れた体験学習の提案

抄録

【目的】<BR>  高等学校の家庭科においては、実践的・体験的な学習が中心となるよう配慮され、小さな子どもや身近な高齢者との交流が求められている。幼い子どもとの交流は、保育園などで行われ、引っ込み思案な生徒であっても、積極的な子どもたちからの働きかけによって、ある程度の時間を取れば子どもたちと生徒は交流することが可能となる。一方、高齢者との交流は介護体験や高齢者とのふれあいなどによって行われるが、生徒からの働きかけがなければ、交流することが困難な場合がある。<BR>  そこで、高齢者と関わる方法の1つとして、アロマセラピーのハンドトリー トメントを取り入れた体験学習を提案したい。アロマセラピーは精油の「香りの効果」「成分の薬理効果」と、アロマセラピートリートメントによる「タッチの効果」によって、人間がもともと持っている自然治癒力を引き出し、心身のバランスを整える自然療法である。近年、日本でもアロマセラピーは身近になり、生活に香りを取り入れる機会が増えている。中学生や高校生の中にも関心を持つ生徒もいるだろう。<BR>  本研究では、アロマセラピーを用いながら、若者(本研究においては短大生)が高齢者に対してハンドトリートメントを行うことによる心理的変化の検証を行い、家庭科における高齢者との交流をはかる体験学習に取り入れることの一提案を行いたい。<BR><BR> 【方法と手続き】<BR>  調査期間は2007年7月~2008年2月である。大阪府にあるA短大の学生に呼びかけ、5名の学生(いずれも女性)がアロマセラピートリートメントの練習を重ね、実際に高齢者の自宅へ伺った。訪問先は、大阪府にある居宅介護支援事業所に依頼し、アロマセラピートリートメントが可能で、今回の趣旨に対して賛同を得た家庭を紹介してもらった。プライバシーの保護に十分留意し、ボランティア保険にも加入した。訪問には、教員が同行し、訪問は4家庭に2回~5回行った。学生と高齢者には、事前事後調査にアンケート調査を行った。また、高齢者には体調と血圧、脈拍を毎回測定した。<BR>  ハンドトリートメントに使用する精油は、先行研究により、心や身体に鎮静効果があり、比較的好まれる精油を選択するように検討した結果、citrus sinensis(オレンジ・スウィート)、lavandula angustifolia(ラベンダー)、pelargonium graveolens(ゼラニウム)をブレンドすることにした。初回訪問時に、アレルギーの有無を判断するため、高齢者に対してパッチテストを行っている。<BR><BR> 【結果】<BR>  学生が高齢者と向き合い、最初はどのように話しかけて良いか分からない状態であっても、アロマセラピーの精油の説明をしたり、ハンドトリートメントをしながら状態を聞いたりすることによって、お互いに少しずつ受け入れていくことができていた。「何を話して良いか分からない」という状態はなく、慣れていくことでアロマセラピーとは関係のない会話も徐々にされるようになり、お互いにうち解けることが出来るようになった。また、学生が持っていた高齢者に対する印象も、高齢者と笑顔で話をしているうちに良くなっていき、「とても優しかった」、「楽しい」、「可愛い」というような印象を持つようになっていった。<BR> もし生徒が会話のつなぎ方や相手を受け入れる態度など、本人の持つコミュニケーション能力が不足している場合であっても、アロマセラピーの話やアロマセラピートリートメントに関わる話をすることで会話が成立する可能性を見いだせた。近年、高齢者とふれあう機会が少なく共通の会話を持ちにくい中、異世代との関わりをもち、高齢者への印象がより良いものになるのであれば、有意義な高齢者との関わり体験になると考える。<BR>  この取り組みを高等学校の家庭科で活かす為には、(1)指導者、(2)精油(アレルギー)等の問題を解決する必要があるが、外部講師を活用したり、教員が学んだりした上で、精油を使わない方法なども含めて取り入れることも可能ではないかと考える。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205595264896
  • NII論文ID
    130006962286
  • DOI
    10.11549/jhee.52.0.67.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ